高校の進路について、強豪校出身の筆者が解説します

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サッカーのプロになりたい、もっと上のレベルを目指したい。そう考えたとき、重要になってくるのが

高校進学時の進路

であることは間違いないだろう。

この記事では、千葉県立八千代高校という世間一般で言われる強豪校出身の筆者が、その後のサッカー人生の経験も踏まえ解説していく。なお、Jユースや競合からスカウトを受けるような選手ではなく、自分から挑戦しに行くような選手を対象としている。ご了承いただきたい。

 

 

 

 

サッカーと勉強、どちらを優先する?

 

進路を決めるときに、まず悩むのが

・より勉学に重点を置いた進路か
・サッカーに重点を置いた進路か

という点だろう。

これは筆者独自の意見だが、より重視するべきはサッカーだと考えている。理由としては、

①サッカーは勉強よりも自力で成長することが難しく、環境に左右されやすいこと
②勉強、特に大学の進路に関しては浪人等で取り戻すことができるが、サッカー選手の一年は取り戻せないこと

という点が挙げられる。特に②に関して。
一般的な社会人に比べてサッカー選手の寿命ははるかに短い。一番サッカーに専念できるプロ選手ですら、平均選手寿命は24歳程度と言われている。

プロになれるか分からない中高生のみんなにとっては尚更、一年一年がその為の真剣勝負であり、プロをあきらめるタイミング、その期限が迫ってしまうのだ。

そういった意味でも、サッカーを優先させた進路を選ぶことは重要だと考えている。
私も結局選手としては駄目だったが、そういった選択をしたことで後悔を残さずチャレンジできたと実感している。

 

具体的な進路

 

ではサッカーを上達させるためには、どんな進路を選べばいいのか。具体的な進路先を挙げていこう。

 

①セレクションで入るチーム

 

具体的には各Jクラブの下部組織、強豪の高校が該当する。特にJユースはプロに最も近い存在であり、出来るのであれば誰しもが入団したいだろう。

現代はユースだけでは無く、もはや高校サッカー選手権もセレクションを突破しないとスタートラインにすら立てない状況になりつつある。

しかし当然ながら、これらは遥かに狭き門であり現実的には難しい。それでも、セレクションを受ける価値はあるのではないだろうか。

 

セレクションを受けるメリット

 

普段、みんなは監督やコーチからの評価で、いつも同じメンバーと競っている。
それがチームというものであり、サッカー選手の宿命でもある。

しかしセレクションは全く違う世界だ。その日出会った選手と共に戦い、競い合う。
しかも参加してるのはみんな自信のある選手ばかりだ。この中に飛び込むことで

・チームの外、広い世界のレベルを知れる
・その中で自分の現在位置を感じる

ということが出来る。簡単に言えば、

「Jユースを目指す選手はこれぐらい上手くて、それに対して自分の実力はこれぐらい。差はこれだけあるのか・・・」

という目指す基準が出来る。

この基準、上のレベルと当たる感覚は絶対にサッカー人生において財産となる。
セレクションに参加するチャンスがあれば、ぜひ参加してみよう。もちろん合格するチャンスだってゼロではない。しかし参加しなければゼロになってしまう。
失うものがないチャレンジは、実はとても貴重なものだ。是非飛び込んでみていただきたい。

 

高校にセレクションで入る場合

 

最近は全国大会に出る、あるいはプリンスリーグ以上のリーグ戦に所属するような学校のほとんどはセレクションで入部できるかが決まる。

端的に言ってしまえば、サッカーだけで進路が決まる学校だ。

メリットはそのまま、サッカーが生活の中心になることだろう。デメリットは進路の潰しが効きにくいこと。
サッカーを辞める、あるいは続けられない事態になる、となったときにサッカーで進路を確保してきた選手は苦労するかもしれない。

だが浪人すればやり直しはきく。一年本気で勉強すれば結果は出る。
そう考えるとサッカーに全てを懸ける、進路も人生の行き先も。と言うのは一つの選択肢であろう。

この場合も上記したように、とにかくセレクションを受ける価値はあると思う。こういった高校に入った時点でスタートラインに立てるのであれば、引っかかるまで探すのも一つの手かもしれない。

その際、自分の特長と学校が評価する選手が合致する高校を探すのがベストだと思う。テクニック重視なのか、フィジカルなのかスピードなのか。自分が通用しそうか、自分が何を求められるかをリサーチするのはセレクションの戦略として必要だ。

 

②強豪校で入部テスト無しの高校

 

多くの選手が進学するであろう高校は、このタイプになる。

私が卒業した八千代高校や、市立習志野高校などがこの分類だ。近年は特に、高校でも入部人数を制限する学校が出てきており、入ることすら難しい。流経大柏も、私が高校2年の時あたりから希望者全員入部を廃止したと耳にした。

基本的に入部を制限しない強豪は部員数が100人以上いることが多く、選手を管理しきれないというのがその理由だが、スカウトや入部テストに落ちるような選手が最後の希望を抱いて入学するのがこのタイプであり、チャレンジする機会は開かれている。そのため多くの選手が進学し、部員150人というような規模になるのだ。

ここからは、特に私の経験を踏まえて、そういった学校の部活のメリットデメリットを挙げていく。

 

メリット→誰にでもチャンスはある

 

全ての高校がそうとは限らないが、チャンスは本当に誰にでもある。私の在学中は約150人という部員数だった。部内では

トップ
B1
B2
B3

の4チームに分かれて活動していた。

各チームにそれぞれコーチがおり、定期的にコーチミーティングが行われる。その結果、頻繁にチーム昇格、降格が指示された。

どの選手にも評価する目は届いており、全員にチャンスが与えられていた。私は中学時代全くの無名選手だったが、二年開始時にB1までは上ることができた。数ヶ月でB2へ落とされてしまい、再びB1へ上がれたのは三年生になってからだったが、それでも無名選手がトップチームまであと一歩という状況に、一年間で辿り着けたのは紛れもなく実力勝負だったからだ。

そういった意味では、全員にチャンスがある学校は確かに存在する。

 

 

 

 

デメリット①→練習環境が悪い

 

先ほど、八千代高校は4つのカテゴリーに分けられると書いた。
だがこの4つ、練習環境にとんでもない違いがあった。

 

サッカー部が練習で使えるスペースは、フルピッチ1面+ゴール裏の小さなスペースだ。そして150人中25人程度しかいないトップチームは、ピッチの半面を使って練習をする。

つまり残りの125人は、半面+小スペースを分け合って使うこととなる。

この狭さは尋常ではない。一番人数が多い練習でも4vs4+GKまで。ロングキック、サイドチェンジなんか全く使うことはない。

一番下のB3に関しては、ゴールすら使わせてもらえなかった。鳥かご、1vs1、走り込みで毎日が終わってしまう。

そんな練習をしてるとどうなるか。

いざ練習試合や紅白戦で11人でサッカーをしたときに、全く広さに慣れることができなくなってしまう。そりゃそうさ、普段そんな広い視野でプレーしてないもの。
サイドチェンジしろ!って言われても出来ない。普段逆サイドを見るような広さで練習してないから。

「上達するのが難しい」環境になりやすいということがイメージしてもらえただろうか。

 

デメリット②→指導者がいいとは限らない

 

強豪校がなぜ強いのか。指導者が素晴らしいから選手が大きく成長する、とは限らない。

強いといわれる高校には、当然ながら才能ある選手が集まる。つまり、指導者の質に関わらず成長するような天才ばっかりの可能性もあるのだ。凄い選手が集まったから強いけど、指導者は根性しか言わないなんてことが今でもあり得るのがサッカーの怖いところだ。

 

私は八千代高校でめちゃくちゃ努力したし、いい経験もたくさんした。しかし、良い指導をしてもらえたとは正直思えなかった。

思えば進路を決めるときに、指導者の質・評判をリサーチしようと思わなかった。もしそこに重点を置いて高校を選んでいたら、全く違う高校に進学していたであろう。

またいくら指導者の質が高くても、それがトップチームのみというパターンもあり得る。上のチームに行かないと良い指導者に見てもらえない。そうなった場合、成長するチャンスを得られないということになってしまう。下のチームで根性根性!と三年間言われる生活は辛いぞ。ほんとに。

とはいえトップチーム以外の指導はおそらく在学生にしか分からない部分でもあるため、事前に調べることは難しい。

 

ではどう選ぶのか?

 

じゃあ実際どうすればいいのか?というお話。

要は今まで書いたことをよーく考えればいいのだ。

 

①ダメもとでセレクションを受ける

 

とにかくチャレンジしてみよう。
これだけは本当に大事だと思う。

 

②日頃の勉強を頑張る

 

次はここ。

スポーツ推薦のようなものがもらえない、あるいは存在しない場合。進学したくても学力が足りないというのは悲しすぎる。
私は幸運にも勉強が得意だったため、偏差値66ぐらいの八千代高校には余裕をもって入学することができた。

どこへ進学するか、という候補を増やすのは実はすっごく大事だ。

 

③とにかく知り合いの話を聞く

 

大会の結果だけで決めてはいけないのは先ほど書いた通り。

実際に通っている人や指導者の知り合いなど、とにかくサッカー関係の知り合いに話を聞いてみよう。
ちなみに私は後輩に八千代について訊かれたとき、

「お勧めしないよ」

と答えていた。実際にそこでプレーしている人の生々しい意見は、とても参考になるはずだ。その話の中から、指導者の質や部の雰囲気など色んな情報を集めていこう。

 

③練習を見に行く

 

私がやらなくて後悔したのはここ。練習参加はさせてもらったが、それではトップチームしか分からない。それ以外のチームを見に行き、

・どんな指導をしているか
・選手たちは楽しそうにやってるか
・自分に向いてそうか

という所を見てみるのが、一番良い情報収集だと思う。要は、「この人に教わりたい!」「このチームなら成長できる」とトップチーム以外、二軍以下でも思えるかどうかだ。

 

最後に、なぜこの記事を書いたか

 

高校の同級生の大半は、高校でサッカーをやめてしまった。それはきっと、

「全国高校サッカーに出たい、プロになりたい」

という気持ちだけで選んでしまい、サッカー自体が嫌になってしまった人が多かったからだと思う。
ホントにサッカーで勝負したいならば、もっと大事なのは

・どんなサッカーをしたいか
・どんな人に教わりたいか

ということだ。その基準で選ぶために、強豪校の生々しい話と具体的な選び方を書いた。

これが今後のみんなのサッカー人生に役立てばと思う。
高校の3年間はサッカー選手としても、人生全体においても大きく、濃いものだ。

幸せなサッカー生活を過ごしてほしいと切に願っている。

 

 

追記・目標設定の話

 

一つ、追記したいことがある。

そもそも強豪校に行くのか?という話だ。

強豪に行く、というのはプロになりたい、あるいは全国クラスの大会に出たいという選手が多いだろう。

だが文中で書いたように、強豪校のほとんどはセレクションを勝ち抜かないとスタートラインに立てない。

 

みんながみんなプロになれるわけでは無い。

(関連記事)プロになれなくても、サッカー続けますか?

強豪に行くだけがサッカーの続け方では無い。

例えば中堅クラスの高校に行って確実に主力として試合に絡める生活を送る、とかも一つの選択肢だ。その中で全国常連の高校を倒す、という目標で3年間戦うのも間違いなく自分の成長に繋がるだろう。

 

どこにサッカーの目標地点を設定するのか、というのは中学で決めるのは決して簡単では無いと思う。

だがそこで例えば「プロは成れなそうだけど、サッカーは続けたい」と思えば大学の進学などを考えた学校に進んで普通の部活で本気でサッカーをする、というのも正解なのだと思う。

筆者は強豪を選んで敗れたことに後悔はない。だが、だからといって強豪に行くべき、とも思っていない。

自分が何を目指したいのか、どのレベルを目指したいのか。進路を悩むのであればせっかくの貴重な悩める時間を、自分がサッカーを通して何をかなえたいのか考えるのに費やしても良いと思う。悩んだ分、その答えは貴方の心の支えになり続けるはずだ。

 

 




 

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