「気持ちで負けるな!」って何が言いたいのか?なぜ成長のために必要なのか?

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よく指導者の口から

「気持ちで負けるな!」

という言葉を聞かないだろうか。筆者の経験としては育成現場で聞くことが多い気がしてる。
この言葉、精神論でしかないと捉えられがちだが選手時代の経験から馬鹿に出来ない言葉なのではと考えるようになってきた。

そこで今回は、この言葉の奥にある意味やメリット、そして選手自身がどう捉えるべきかということを解説していきたいと思う。

プレイヤーのみならず、指導者の方の声かけの参考にもなるよう選手の心理をなるべく汲み取りながら書いた。是非読んで欲しい。

 

 

 

 

気持ちで負けるとは??

 

気持ちで負けないメリットを考えるには、まず「気持ちで負けてる状態」を知らなくてはならない。
選手時代の経験から、この状態になるとどんな心理になるのか、どうプレーに影響するのかを考えてみた。

 

「気持ちで負ける」定義

 

まずは簡単にこの定義を決めよう。それほど難しい話ではない。

①相手との実力差を感じ弱気になる
②モチベーションの低下により戦意が削がれる

というあたりが該当すると思う。いずれにしても勝てる!という信じる気持ちや自信が失われた状況を思い浮かべてもらえればいいかと。

これは試合に限った話ではない。トレーニング中に落ち込んでこの状態に陥ってしまう選手もいるし、それが長期化すれば自分の実力を100%発揮することが出来ないまま日々を送ることになってしまう。心が折れることは選手にとって勝敗以上に選手生命そのものの損失と言えるほど深刻なものなのだ。

では具体的な影響を挙げていこう。

 

積極的なプレーを選択できない

 

一番影響が大きいのはおそらくこの点だ。

サッカーに限った話ではないが、判断にはリスクとリターンがついて回る。
縦パスは通ればチャンスだしカットされれば相手に攻撃権を渡すことになる。
積極的にボールを奪う守備をしても、奪えればチャンスになるし抜かれれば数的不利を招く。

そしてサッカーには往々にして、
「リスクは背負わないがジリ貧になる判断」
というものが存在する。

パスコースを限定するだけでボールを奪いに行かない。安全な横パスを繰り返す。
もちろん狙いがあってあえてそういったプレーを選択することもあるが、狙いが無くリスクを避けるだけでは勝利には近付かない。リスクを犯さないことがミスになる場面というのは多々あるのだ。

だが気持ちで負けている弱気な状態ではリスクに立ち向かうことが出来にくくなる。成功のイメージが思い浮かばなくなるのだ。何をしても通用しないのでは、ならば安全なプレーを…という思考に走ってしまう経験が筆者にはたくさんある。

せっかくDFラインの裏を取れるチャンスなのにスルーパスにチャレンジしない。
前を向けるスペースがあるのにターンせず戻してしまう。
ボールの奪い所なのにプレスに出ていけない。

これらのように適切なタイミングでリスクを犯せないことは、判断ミスになってしまう。
「リスクを犯さないという判断ミス」
があるということを知ると見方が変わると思う。

 

体の動きが縮こまる、固くなる

 

心理状態と身体の動きはまさしく連動する。プレッシャーのかかる、あるいは極度に緊張する状態では普段出来る動作が出来なくなるのはスポーツに限らず誰しも経験したことがあるだろう。

それは重圧だけではなく弱気な心理状態でも同じだ。
「相手にやられるかもしれない」
と一瞬でも頭によぎれば緊張が生まれる。過度な緊張は筋肉を硬直させる。固まった筋肉では柔らかい動作など出来るはずもない。結果としてボールタッチ、キック、ステップワーク、ジャンプとあらゆる動作に支障が僅かにでも出てしまうのだ。
先ほどの弱気が判断のミスにつながる例に習えば、こちらは技術的なミスにつながる。

大舞台の試合で選手が腕をプラプラと振るのは身体からほぐして精神を取り戻す側面がある。

 

結果的にプレーの質、成長速度が落ちる

 

上記のような影響があると何が起こるか。
当然だがプレーの質は落ちる。よって指導者はベストパフォーマンスで戦うべく声をかけるのだ。
試合に関してはとにかく自分を奮い立たせるしか無い、だが問題は日々のトレーニングだ。
毎日のトレーニングに必要なのは、出来ないことを習得するための挑戦だ。だが先に書いたように心が折れれば挑戦できなくなる。よって成長スピードが落ちてしまう。

 

選手が上達のために心がけるべき事

 

では選手はどうすればこれらに対応できるのか。どんな心がけを持っていれば良いのか。筆者が成し得なかったことを考えていく。これが現役時代に克服できなかったことを今でも悔やんでいる筆者を反面教師として是非知って欲しい。

 

①怒られること、失敗を恐れないために

 

この言葉、言うのは簡単だが実行するのは非常に難しい。思考を上回るのは本能であり、恐怖はまさしく本能から来るものだからだ。
これを克服するには、理屈と思考でどうにかするしかない。

凹んでも得るものが無く成長の助けにならない。成長するには失敗しても無理矢理次に進むしか無い。

という理屈を常に自分に言い聞かせ、叩き込むしか無い。これは自分の精神の強さの問題だ。筆者は理屈として理解できても自分の心が折れるのを抑えきれなかった。そして一度折れると立て直すことが出来なかった。

心が全く折れないようにするのは相当難しいし、性格が関わってくるだろう。と考えれば

「心が折れてからいかに早く立て直せるか」

というのが選手の成長を決める要素の一つになるのでは、と考えるようになった。

ミスして怒られて、心が折れてもいい。次のプレーまでの僅かな時間で立て直すことを目標にしよう。心が折れている時間は成長のためにならない無駄な時間だ。凹む暇があったら正しい反省をする、という冷徹な正論を常に自分に浴びせられる選手はきっと強くなれる。

 

②他人との競争を全てだと思わない

 

サッカーとは他人との競争にまみれたスポーツだ。試合は相手と競うし、試合に出れるかメンバーに入れるかもチーム内での競争だ。だからこそ自分の成長よりも他人との競争の結果に目が行きがちだ。メンバーに入れた、スタメンに選ばれた、ベスト16進出できた・・・

だが本当に上手くなったかどうかは過去の自分と比較しないと分からないはずだ。Aチームに選ばれない日々が続いたとしても一週間前の自分より上手くなれてると自覚を持ち続けられれば周囲に惑わされずに自分の成長に向けて努力できるはずだ。

自分の成長に常に焦点を当てることが出来たら、失敗しても怒られてもそれを成長の材料としてのみ捉えるように努力できる。監督の評価ももちろん大事ではあるのだが、それ以上に自分の成長をとにかく目指すように意識してみると、監督やコーチの怒号も今までと違った聞こえ方がするはずだ。

 

生産性を常に考える

 

自分が上手くなりたいのであれば、トレーニングの時間は無駄には出来ない。一日が24時間あるとしても全力の強度でトレーニングできる時間はそう長くない。トレーニングの時間を無駄にせず、密度の濃い日々を過ごすためには「常にチャレンジする」という姿勢が必要不可欠だ。

そのチャレンジの土台となるのが折れない気持ち、だといえる。

その場の試合に勝つために「気持ちで負けるな!」と言われても響かないだろう。だが日々心を立て直しながら上達のスピードを加速させるために必要だと言われれば説得力も低くないのでは無いか。

筆者は幾度となく心が折れた。その結果何日もの練習でチャレンジすること無くプレーしてしまった。ミスしないプレーを繰り返すトレーニングなど現状維持にしかならない。その結果成長できる余地を失ったのだ、無駄にしたのだ。

皆様にはそうなって欲しくない。濃い一日一日を、濃いトレーニングをこなして欲しい。その大前提になるのが精神力なのだ。

 

 




 

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@山田有宇太

 

 

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