がむしゃらに視野を広げようと頑張るよりも「何を見るべきかいつ見るべきか知ろう」という提案をしたい
サッカーにおいて、視野の広さというのはとても大切だ。こんな文章を書くのも少し恥ずかしくなるほどに、周りが見れているというのは大事であり、プレーの質に大きく関わってくる。
だからこそ練習から、もっと見ろ!とか首を振れ!とか言われるし自分でも意識して取り組んでる人が多いと思う。
ところで先日こんなやりとりをした。
その全体像を掴む感覚が一回でも持てればいいんですけどね笑
— 山田有宇太 (@Grappler_yamayu) January 3, 2021
使い分けられると認知は向上するはずなので、「よく見ろ!」から「さあ何を見よう!」という意識付けに変えつつ「全体ボヤって見る手もあるよ!」という順序だといいですね!
気持ちいいの分かります!浸りすぎてプレーに活きなかった!
筆者は現役時代、必死に首を振ってプレーをしていたが視野が狭いと言われたまま向上できずに引退してしまった。今ならばその原因や、何をすべきだったのかが分かる、ような気がしている。
そこで今回は、その苦い経験を思い出しながら「どうすれば視野が広い選手になれるのか」という観点で考えてみたいと思う。是非日々のプレーの参考にして欲しい。高校時代、同級生からピンチファクトリー(危険生産工場)と 呼ばれた筆者の後悔を見届けていただければ幸いだ。
「視野が広い選手」という言葉を考える
まずこの言葉の意味から考え直した方が良かったな、と筆者は引退してから思った。
そもそも人間の視野というのは角度に関して言えば大差がない。両目で見える角度が約120°、ぼやっと片目で捉えられる範囲も含めれば200°近くと言われている(参考サイト→快適視生活応援団)
つまり物理的に視野が広い選手、というものは一般的には存在しないわけで厳密に意味を取ればこの言葉は正しくない。
より意味という面から正しい呼び方を考えれば「情報量が多い選手」「見ているものが多い選手」という事になるのでは無いだろうか。
なぜ冒頭でこんな言葉遊びのような文章を書いたかといえば、この考え方をすることによって視野を広げるという思考を変えることが出来る。そして変えた方がプレーに活きるのでは無いか、と引退してから思ったからだ。
何を見れば良いか分からない選手達
情報量の多い選手の方が良い判断が出来る、というのはおそらく間違っていないと思う。
実際判断力に優れた選手を指して「俯瞰で見ている」であるとか「ピッチ全体がよく見えている」と表現することも多い。だが筆者はこれらを見て「見るものを増やさなくては」と必死に首を振り続けた結果、
「よく首は振るが見えていない」
という一番良くない状況に陥ってしまっていた。高校から引退少し前ぐらいまでである。
そして引退直前、ほんの少しだけ気付けたことがある。
「何を見るべきか分かっていないと正しく情報を集めることが出来ない」
ということだ。
おそらく上手い人は当たり前に出来ていたのだろう。当たり前すぎて指導されてこなかったのかもしれない。だが筆者にはそれに気付くまでに17年も要していたのだ。
だが筆者の周りにも自分以外に「もっと周りを見ろ!」と言われながら習得できなかった選手達が居たこともまた事実だ。必死に色んなものを見ようとはするが判断に、プレーに活かすことが出来なかった選手達を多く見てきた。
だからこそここに書き残したい。多く見ようとするよりも先に、何を見るべきかを整理することが大切だと伝えたい。
いつ見るか
本来ならば、何を見るかをここで記載するのが順番だろう。だが先にいつ見るか、というタイミングの話からしたい。
なぜならば、いつというタイミングによっても見るべき対象が変わってくるからだ。
①ボールとの関係が薄いとき
まず、今すぐパスが来るわけでは無い状況。逆サイドにボールがあったり自分よりも近いサポートの選手が複数居るような状況をイメージして欲しい。
この段階では、ボールをそれほど気にする必要は無い。それよりも人の配置を見ておきたい。
逆に言えば全体をしっかり見る余裕はこの段階以外では失われていく。自分の近辺にボールが来たらどうするかを考えるのがこの段階でやるべき事だ。注意の範囲をピッチ全体に広げる、と言っても良いだろう。
②ボールが近辺にあるとき
ここからはボール中心に考えざるを得ない。いつパスが来るか、味方が何をしたいかも考えなくてはならない。つまり先の言い方に習えば、「注意の範囲を近辺に絞る」ということになる。自分にパスが来たら誰がプレスに来るのか、どれだけスペースがあるか、パスコースはあるか。近辺のことを考えなければボールを失う危険性が高まる。
このようにボールとの距離、関係によって見る対象を変えると良いと思う。
③パスが自分に転がってくる間
これはよく指導で言われる部分だと思う。ボールが来る間に首を振って周りを見よう、というもの。
だがここは最終確認に過ぎない。大事なのはコレよりも前にどれだけ見ていて、どれだけ考えていたかだ。状況が変わっていないかの確認をするために見ると考えた方が良いのではないか。
実際、筆者はここで全てを見て判断しようとしてしまっていた。今思えばあまりにも無謀でありその前段階で得ている猶予を無駄遣いしていたのだなと思う。
何を見るか、見て何を考えるか
ここまで時系列順に、どの範囲で見るかということを考えてきた。
では何を見るべきかを実際に起こしていきたい。だがあくまでこれは一例に過ぎない。ここに書くことを参考に自分で練習から実戦しながら自分でも模索して欲しい。
①自分の周辺のDF
まずは自分の周辺だ。もしパスが来たときに何をするにもスペースが必要だ。
そしてDFをより意識してみると良いだろう。誰が自分に対して最初にプレスに来るのかを見ておく。これが分かれば前を向けるのかキープするのか、ワンタッチではたくのかの判断もしやすい。
「うわ、プレス来た!やべ!」とならないために、誰が来るのか、どの方向からどの距離で来るのかを見ておく癖を付けたい。なによりも1stDFに対するプレーが出来ないと始まらないからだ。
②自陣側の状況
これ、筆者が身につけておけば良かったと最も思った見るべきものだ。
DFからのプレスがきつくて奪われそうになったりトラップをミスしたり味方が想定外の動きをしてパスコースが無くなったとき。
安全にバックパスできる「逃げ場」を確保しておくことが非常に重要となる。これを筆者は何故か出来ないままずーっとプレーをしていた。今思うと正気の沙汰では無い。
この逃げ場を確保しておくことで「スペースがあるから前を向く、前線がマークを外せていないので下げてやり直す」と言った二段構えのプレーのイメージを作ることが出来る。ダメだったらここに逃げる、という選択肢を確保することをマスターして欲しい。
③ゴール方向の状況
そして当然ながら攻撃方向の状況も把握しなくてはいけない。
だがここでも全てを把握しなくてはいけない、とは考えない方が良いと思う。もちろん、見るものや情報量を増やす意識は必要だがそれに気持ちを全て持って行かれるのも厳しいと体験から考えるようになった。
最前線は絶対に見るべきだがそれ以外はポジション毎、チームのスタイル毎に見るべきところは変わったりする。たとえばサイドバックはサイドハーフのポジションを見て縦パスを付けられるか、サイドハーフに出したあとのサポートはあるかを考えた方が良いし、あるいはボランチを経由しようという指導があればボランチを見る癖を付けなくてはいけない。
全部を見ると言うよりも「見るべきもの」をリストアップし優先順位を付ける感覚を持つと良いと思う。あくまでも一例だがボランチの選手であれば
①逃げ道
②最前線
③同サイド
④逆サイド
という順で、なるべく早く多く見るような意識だ。この考え方のメリットは「見落としてはいけないものを確実に見る癖を付ける」という点にあるのではないか。
筆者の実際の体験として、逆サイドへの展開を意識する余りDFラインの裏を取ったFWの動き出しを見落としたりプレスに来るDFを把握できずにターンしたところで奪われたり、というケースが多発していた。これを防ぐためには優先順位を付け、一つずつ見れるように向上していけば良かったのでは無いかと思っている。
実戦で意識しながら体に覚えさせる
このように、まずは自分の脳内を整理することに取り組んで欲しい。
もっと具体的に整理する内容を挙げていけば
・どんな状況で判断ミスをしたのか
・どこが見えていないからミスしたのか
・ではどの優先順位で見れば良いか
というのをあらゆる判断ミスにおいて振り返って欲しい。見えてたか??と常に自分に問い続けるのだ。出来ればトレーニング中にその場その場で毎回振り返ることが理想だ。出来ていないことを自分に問い続けるのは苦しいし辛いかもしれない。だが振り返り→反省→改善のサイクルを早めることが上達には何より必要である。
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そして目線の置き所、見るための体の向き、首を振るタイミングなどを少しずつ体に覚え込ませて欲しい。体で覚えれば考えなくても見れるようになる。脳のキャパシティに余裕が出来れば更にプレーの質が上がるはずだ。
首を振るタイミングや体の向きを変えながらのトラップに関しては自主トレに落とし込むことも出来るだろう。参考までに、以前に書いた体の向きとトラップの自主トレの関係の記事を置いておく。こちらも参考になれば幸いだ。
サッカーにおける前を向くトラップの練習法。実戦で使うためには体の向きがポイント。
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