雑記「なぜJリーグを目指すアマチュアチームがトラブルになりがちなのか考えてみた」

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これは昔々、地域リーグで働きながらJリーグを目指した男が考えたあんな話こんな話。

全国に散らばった、プロを諦めきれず夢を追いかけることを選んだ友達から聞いた話。

ニュースで見る色んな話。

そんな諸々を含めて、筆者が考えたことをまとめてみたい。

「なぜJリーグを目指すアマチュアチームがトラブルになりがちなのか考えてみた」

ということで、自身の経験を踏まえて色々考えてみたいと思う。

 

結論

 

先に結論から言ってしまえば、

「結果を出すことを急ぐと歪みが生じる」

ということなんじゃないかな、と思っている。

ただ地域リーグには結果を性急に出さなくては、と思ってしまう環境や理由があるし、それを目指したときに生じる歪みも実際に見てきた。

そんな生々しい話を、ちょっとぼかしながら見ていこう。

 

なぜJリーグを目指すのか?

 

本来、最も土台になるべき理由はここにある。なぜこの地域でJリーグを目指すチームを作るのか。

 

例えば筆者が在籍していたブランデュー弘前の理念を引用してみればこんな感じ。

株式会社ブランデュー弘前は『夢を伝え 夢を届け 夢となる』の理念のもと、活動します。

  • 選手・スタッフが自分の夢を様々な形で発信していきます。
  • また、ブランデューが作り出す空間を新たなエンターテイメントとして提供し、またブランデューの成功体験により夢を届けます。
  • そして、ブランデューのチーム・会社・選手・スタッフがこの地域の目標・憧れ・夢の存在となるように活動していきます。

弘前からJリーグ参入を実現し、この大好きな弘前・津軽の地域をもっと元気に活力あるいきいきとした地域にするために、チームを強化し魅力あるチームを創ります。また、サポーターや地域のために活動ができるクラブを創っていきます。
ブランデューを愛する皆様、勝利や感動を共に分かち合い、弘前からJリーグ昇格の夢を叶えましょう!

ブランデュー弘前公式サイトより

 

 

あるいはいわきFCなら、

私たちの最終的な目標は「日本を元気に」すること。
スポーツの力を信じている私たちは「スポーツを通じて社会価値を創造する」ことで、この目標を成し遂げたいと考えています。
その第一ステップとして、今は「いわき市を東北一の都市にする」ことを目指しています。
いわき市で産声をあげたいわきFC。自分たちの街と、そこに住まう人々が、東北一だと胸を張れる日々を築き上げたいと考えています。

いわきFC公式ページより

 

基本的にはその地域の活性化をサッカーを通じて目指す、というようなものになる。

地域の人が元気になるように、発展するように、その地域に貢献するためにサッカーで挑戦する。それが基本的な立ち位置となる。

 

Jリーグというステータス

 

選手をやっていると分かるが、プロサッカー選手という言葉はちょっと分かりにくい。

厳密に言えば、地域リーグにもプロ契約の選手は居る。選手やフロント内での一般的な定義としては、

「サッカーだけで生計を立てられる契約」

が出来ている選手をプロ契約と呼んでいると思う。地域リーグの多くは同じチーム内でも契約に差があることが多く、プロ契約が数人いるなんてチームは珍しくない。

 

だがそんな話は正直に言ってしまえば、サッカーを見に来る観客にはそれほど関係も影響もない。

多くの人を呼べるのは、「Jリーグ」という名称、ステータスである。

 

だから多くのチームはJリーグを目指す。辿り着けば何かが変わると信じて。

 

Jリーグへの道中は厳しい

 

はいうものの、Jリーグという大舞台は当たり前だがそう簡単に辿り着けない。

その道中で足踏みするチームが沢山いる、そして消えていったチームも決して少なくない。

2019年に上田ジェンシャン、2020年には長らく中国リーグで活動していたデッツォーラ島根が解散した。

 

そうでなくても、足踏みが続く中で資金難やメンバー不足に苦しみ力を落としてしまうチームは沢山いる。

一般的に考えれば、年数をかければかけるだけ成長するのでは無いか、と思うかもしれない。というか筆者がかつてそう思っていた。

だがプロではない、サッカーで稼ぐことがまだ難しいアマチュアだからこそ、足踏みには多大なるリスクがあったりする。

 

足踏みすることで被りうるリスク

 

Jリーグを目指す新進気鋭のチーム。彼らは大きな期待を背負っている。

これからJリーグのチームが誕生するかもしれないんだ、という高揚感はアマチュアならではのものだ。

それは未知なるものに対する期待だったり、まだ見ぬ未来に託した希望だったり。

 

そんな空気は、数年間同じリーグで苦しむと少しずつ冷えていってしまう。

またダメか、いつになったら上がれるのか。そんな冷え始めた空気は自治体の協力やスポンサーの協賛金額や、観客動員数にまで影響が出始める。

もちろんそうではなく、辛抱強く応援してくれる人や企業も少なくはないだろう。だが現実として、そういったクールダウンは生まれてしまう。

 

どうすれば避けられるのか

 

そんな事態を避けるには一体どうすれば良いのか。

個人的に辿り着いた答えは

「サッカーの結果以外で、どれだけ価値をもたらせるか、存在意義を作り出せるか」

というものである。

たとえJリーグという舞台が遠く、何年も足踏みをしたとしても変わらずに応援してもらうには結果じゃない部分がとても大事になる。

それでなくても結果というのは水物だ。そうではなく、ずっとこの街で戦って欲しいと言われるようなチームになれれば。

期待感や高揚感といったものは薄れてきても、代わりに愛着を持って貰える。

そして個人的なクラブチームのゴールは、「存在し続けることが価値」というレベルまで辿り着くことだと思う。これは書き始めるとまた長くなってしまうのでさらっと流すが、無くなりそうなときに「なんとかして続けられないか」と多くの人が思ってくれる、そんなクラブになれれば良いのではないかとずっと思っている。

 

結果を残すための改革、そこで流れる血

 

ただそうはいっても結果を求めなくてはいけない。となってくれば経済的規模を大きくしたり、選手を一新してよりハイレベルな布陣にしたりという改革は必要になってくる。

早く結果を出したいとなれば、強引さも必要かもしれない。

 

そこで問われるのは、「かつて支えてくれた選手や支援に対するリスペクト」ではないだろうか。

 

別に選手の入れ替えが悪いことだとは全く思っていない。競争によって成り立っているのだから当然だとすら思っている。ただ、それまでの貢献をしっかりとリスペクトして送り出す、それが出来るか出来ないかの差はとてつもなく大きいと思う。

今までありがとう、と本当に思っているかは誰にも分からないかもしれない。だからこそリリース時の姿勢であったり扱いであったり、という部分から人は評価する。

その点で失敗してしまえば、チームとしてのイメージは低下し、応援してくれる人は減ってしまう可能性が高い。

実際に、かつて筆者がいたチームではそういった観点からサポーターを辞めてしまった人を知っている。逆に結果に苦しんでいても運営に信頼があるから続いているチームもまたしかりだ。

 

レベルアップしていきリーグが昇格していくにつれ、選手もスタッフもスポンサーも変わっていく。それはしょうがないし、必要なことだ。だからこそどんな姿勢かが問われるのだ。

 

「続いて欲しい」と思われるクラブへ

 

最後に、個人的な願望を。

実際に中に居た身だから、Jを目指すと公言することの効果はよく知っているし、地元にJリーグチームが出来るかもという高揚感は大切だ。

だが、本当に人はJリーグという結果だけを求めているのだろうか?

ここに経営陣とサポーター達との差があるのかもしれない。

 

勝つことも大切だが、一番大切なのはその道中だと思う。

必死に上を目指す姿勢に共感や感動や勇気を感じるから応援してくれる、そんな人に筆者はたくさん出会った、とても有りがたいことだと思っている。

そして自分が応援するチームがあるのもまた同じような理由だ。

勝って欲しいと思うし願うが、それが一番大事ではない。勝利を全力で目指す姿勢を見届けたくて、応援しているのだと思う。

 

そういった姿勢を応援して貰えるようになったチームはきっと、「続いて欲しい、もっと見ていたい」と思われるはずだ。

その境地まで辿り着ければ、たとえ結果が付いてこなくても人はそこに物語を見出す。それは価値となり、やがて存在自体が価値となり地域に必要とされるものになる。

おおげさなことを言ってる、と思われるかもしれない。けど実際にJリーグのサポーターにはこういった考えの人が沢山いると筆者は思っている。

たとえ降格しようが燻ろうが、全力で戦っているならば応援したい、見届けたい。そんな呪いにも似た愛着を持っている人は思いのほか多い。

 

それがきっと、目に見える活動だけでは計れない、地域貢献なのでは無いかと思う。

 

だからこそ、まだ力がないアマチュアクラブもこの境地を目指して欲しいなと考えるようになった。

それはJリーグのサポーターとアマチュアクラブの選手と、両方を経験したからこそ辿り着けたことなのかもしれない。




 

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@山田有宇太

 

 

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