一人で出来るビルドアップ上達の勉強法その1。「守備を突破する」とは。
前書きのようなもの、その0はこちら。
本シリーズで皆様にお伝えしたいのは、一人でも出来るビルドアップ上達のための取り組みだ。
ビルドアップはチームプレーであり、個人で取り組めるものではないと思っている選手が多いと思う。
しかし筆者はそうではなく、取り組み方次第では上達に繋げることが出来ると考えている。
今回は、そもそもボールを保持して守備を突破するということをわかりやすく解説していく。
ビルドアップと言うとチーム全体で行う戦術と捉えられがちだが、中身を紐解いていけばボールを失わずに突破することに尽きる。
そこで少人数の例から分かりやすく、原理を解説していきたい。
前回のおさらいと今回大事なこと
前回の記事から簡単に、今回の解説にあたって大事になってくる部分を紹介する。
「サッカーは絶対的に攻撃側が人数有利」
ボールを前進させる方法は二つ
①前に進むパスを通す
②ドリブルで前進する
「出来ない」のではなく「方法を知らない」
考えて出来るプレーだから、勉強すれば上達する
この四点。
前回は動機であったり筆者の経験が多かったため、今回からが本格的な解説となっていく。
シンプルな例から考える
ビルドアップと言われれば、チームで行う戦術だと考えてしまう。
だが行っている行為はあくまでも
「失わずに」ボールを前進させること
だと言える。
では、この行為の最もシンプルな形として
2vs1
の局面から考えてみよう。
①はドリブルで持ち上がるパターン。
②はドリブルにDFがひきつけられ、フリーな味方が突破するパターン。
これが先に挙げた
ボールを前進させる方法は二つ
①前に進むパスを通す
②ドリブルで前進する
という考え方の根本の部分になる。
2vs1から見る前進する理屈とは
この非常にシンプルな2パターンの突破だが、ここにビルドアップに必要な考え方が実は詰まっている。
順を追って説明していこう。
「択を迫る」という考え方
突然だが、格闘ゲームには「択」という用語がある。
Aという攻撃、Bという攻撃どちらを出しますか?というものだ。
防御側はどちらか一つしかガードできないため、読みを外せばダメージを食らう。
用法として、「択を迫る」というような使い方をする。
だがこれはタイミングがシビアな格闘ゲームの話だ。
これをサッカーに置き換えると、
「後出しジャンケン」
になり得ると筆者は考えている。
上の2vs1の例で言えば、攻撃側が守備に対して
「ドリブルを防ぐか?パスを防ぐか?」
という二択を突きつけている状況だ。
それに対し守備はどちらかを選択しなければならない。
仮に選択せずズルズルと下がった場合、ボールは前進するためこれも攻撃側の成功と見なすことが出来るからだ。
あとは図の通り、守備が選択しなかった方を利用して突破すればいい。
これが、ボールを失わずに前進する上で基本となる考え方だ。
個人的には
「択を迫る」よりも
「択を突きつける」という表現の方がサッカーではイメージしやすいと考えているため、こちらを今後採用していきたい。
人数が増えても理屈は変わらない
ではもう少し人を増やしてみよう。
4vs3の場合だ。
左側は、まず手前のDFへドリブルで対応を迫り、寄ってきたところを3人目の動きを利用するかドリブルするかの2vs1へ持ち込んでいる。
もしここで右側のDFが絞って対応を選択すれば、右側に出来るスペースを利用すればいい。
右側の図は、SBのオーバーラップに近い動きだ。
右サイドへ預けて背後を回る。
これによりDFはドリブル、中央への対応、右への対応と3択を突きつけられることになる。
これらはあくまでも一例だ。
注目してほしいのは、ほぼあらゆる場面に択が発生していることである。
選択肢があればあるだけ、DFはどれに対応するかを迫られる。
対応が間に合わなかった選択肢が突破できる場所となる。
なぜ簡単そうなのに出来ないのか?
ここまで聞くと、誰でも出来るのでは?と思えるだろう。
しかし現実は苦労しているチームがたくさんある。
その原因が筆者にはいくつか思い当たる。
①「択」の原理を教わっていない
そもそもがここ。
基本的に、小学校中学校の年代で教わるのは
・フリーの味方を探して出せ
・ドリブルは積極的に仕掛けろ
とかそんなもん。駆け引きがない。
この「択」というのは、もろに駆け引きだ。
相手がどっちを選択するのか。
それを見て自分はなにを選択するのか。
そこに知的な快感があるのだが、それを教わった経験がある選手はかなり少ないと思う。
②ドリブルで運ぶ優位性、意味を知らない
では択を突きつけるときに必要になってくるのはなんだろうか。
パスが出せること、そしてドリブルで運べることである。
この場合、突破力やスピードはそこまで必要ない。
ただ、怖がらずにドリブルで前進させることが出来なくてはならない。
これがいわゆる「運ぶドリブル」であり、ビルドアップに欠かせない要素だ。
しかしこの運ぶドリブルが、プロレベルでも出来ない光景が散見される。
よくセンターバックがフリーで味方の動き出しを待つ、というシーンを見かけないだろうか。
あれは、運ぶドリブルについて学べていないからパスという選択肢しか無くなってしまっている状態だ。
そこに挑んでいるJリーグチームは神戸や徳島などが分かりやすいだろう。
ボールを持った選手が運ぶと、大いなるメリットがある。
DFが一人引きつけられるわけだから、当然どこかにフリーが出来る。
誰も対応しないのであれば、そのまま前進すればいいだけだ。
ボールを運ぶことの重要性
誰も対応しないのであれば、そのまま前進すればいいだけだ。
とさらっと書いたが、これがすごく大事なこととなる。
択を突きつけるために必要なことは
「対応しなきゃいけない状況を作る」
ことだ。
もし相手チームのセンターバックがボールを運べない選手だと見抜いたらどう対応するか。
当然ながら、誰もプレスに行かずパスを待てばいい。
フリーでボールを持たれても問題ない、ということは対応しなくていい状況になってしまっているということだ。
だからこそ運ぶドリブルの技術と理屈は必修化目とすら言える。
逆に言えば、運べない選手はビルドアップに対して致命的な欠点を抱えてしまうこととなる。
ここ数年で、「引きつけること」が大事と言われてきた。
しかしそれだけでは不正確だ。
引きつけるということは、DFが対応しに来るということ。
DFを対応させるためには、運ばなくてはいけない。
今回のまとめ
いかがだっただろうか。
少ない人数でのシンプルな状況を例に、突破する仕組みと運ぶドリブルの大切さを解説した。
・「択を突きつける」という考え方
・人数が増えても場面場面は択突きつけが発生している
・運ぶドリブルが出来ないと択を突きつけられない
今回はこういった点を中心に理屈について解説した。
次回は、より実戦的な話に入っていく。
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