一人で出来るビルドアップ上達の勉強法その0。なぜこれを書くのか。
本稿で皆様にお伝えしたいのは、一人でも出来るビルドアップ上達のための取り組みだ。
ビルドアップはチームプレーであり、個人で取り組めるものではないと思っている選手が多いと思う。
しかし筆者はそうではなく、取り組み方次第では上達に繋げることが出来ると考えている。
今後、シリーズ記事のような形でその取り組み方や考え方について皆様にお伝えしていきたい。
本稿では、なぜこのテーマを取り上げるかをご説明したいと思う。
筆者の選手時代の経験、自分を含めた周囲のチームや学校のプレーや指導者の声のかけ方を見て様々なことを筆者は考えた。
どうして個人で取り組むことが必須なのか、これを読んでその必要性に気付いて頂ければと思う。
また、もし指導者の方が読んでくださるのであれば。
このような状況が日本にはあったこと。
そして今後どうしていけば良いか、考えるきっかけになれば幸いだ。
筆者の選手時代の経験
筆者は、初めてビルドアップについて教わったのが21歳の時だった。
社会人リーグのチームへ加入したのだが、そのチームの監督に理論として
・なぜボールを前進させられるか
・どんな駆け引きがあるのか
ということを教わった。
それまでは全く教わってこなかった。
強豪校でも、専門学校でも
中学は一般レベルの部活動だからしょうが無いとして。
いや本来は教えて欲しかったが。
筆者の進学した八千代高校でも、理論を教えてもらうことは無かった。
指導者から言われたのは
「なんで失うんだ」
「よく見ろ」
「ボールをもっと動かせ」
今思い返しても漠然としてるし、具体的な習得の方法が全く提示されていない。
なぜボールを動かさなくてはいけないのか、動かすことによってどんな効果があるのか、どう動かすのが効果的なのか知らないまま3年間を過ごした。
技術やフィジカルは向上したが、なかなかサッカーが上手くならなかった3年間だったと思っている。
サッカーの専門学校、JAPANサッカーカレッジでも状況は大して変わらず。
教わらなかったツケは引退までつきまとっていた。
いくら教わっても、体に染み込ませる時間が無かった。
そもそもサッカーを理屈でプレーできることに気が付くのが遅すぎたのだ。
だからこの記事を読んでいる選手には、それに気が付いて欲しいし知っている選手にはその考え方を元により上達して欲しいと願っている。
サッカーが理屈でプレー出来るという意味
サッカーは感覚では無く理屈でプレーできる。
まず、これを大前提においてプレーすることが大切だ。
特に今シリーズで扱うビルドアップは、理屈がほぼ全てだと筆者は考えている。
筆者が体験し目撃した、理論を知らない選手たちの状況を少しお話ししたい。
ビルドアップに苦しむ選手たち
まず、ビルドアップという言葉から見てみよう。
この用語を使わずとも指導者に
「蹴るな!繋げ!」
と言われたことのある選手は多いと思う。
あるいは
「何で失うんだよ!」
というのも意味合いとしては近い。
ビルドアップという言葉を検索してみると、様々なサイトが意味を解説していた。
複数サイトから要約すれば、
「後方から失わずに攻撃を組み立てること」
となる。
今の時代であれば、小学生でもGKから繋いでいく方針のチームもあるかも知れない。
筆者は小学生の育成現場に関して疎いため、ここでは自分の小中学時代の経験を。
筆者のチームは小学校が小さなクラブチーム、中学は弱小の公立校だった。
当然試合をするのにも同じようなレベルのチームが多い。
その時に、意識してボールを繋いでいると感じたチームは1%程度だった。
その1%は有名なチームだったりレイソルの下部組織だったり。
他はほとんどボールの繋ぎ方の指導が無いような状況。
にも関わらず、ボールを奪われた選手に対する指導者の罵声などはよく聞いたものだ。
方法や手本を教えずに、出来ないことに怒る。
それを指導とは言わないだろうと今ならば理解できる。
しかし当時はそれが理解できず自分が悪いとばかり思っていた。
なぜか。
教えられずとも出来る一部の選手がいたからである。
教わらずとも感覚や人より長けた技術でなんとかしてしまう選手がいるからこそ、
「あいつが出来るのに俺は出来ない」
と考えてしまうし、おそらくは指導者も同様だったのだと思う。
今思えば高校でまともな指導が無かったのも、優れたジュニアユースのクラブチーム出身が多かったからでは無かろうか。
良い指導を中学時代に受けた選手は、ある程度理論を理解したまま高校へ進むことが出来るが、一般的な部活動から進学すると理論が欠如したままである。
その結果、入学時点で大きな差が出来、上位の選手だけがトップチームで良い指導を受け成長。
Bチーム以下は精神論で努力にひた走る。
そんな現実があるのかも知れない。
少し話がそれた。
小中高、いずれの年代でもボールの繋ぎ方が分からず、教えてもらえないまま怒られる選手を多数見てきたし自分も経験してきた、というのが筆者の直面した現実だった。
だからこそ、教えてもらえないなら自分で学ぶしか無い。
その手助けや第一歩になれればと思い、このシリーズを書く決意をしたのだ。
ビルドアップは数合わせ、その理由
ではどう勉強していくか、という話に入りたいところだがもう少しだけ。
なぜビルドアップは理論で出来るようになる、と筆者は考えているのか。
サッカーの攻撃の目的はゴールを奪うことだ。
ゴールを奪うためにはボールを前進させる必要がある。
しかしボールだけ前進、となると蹴っ飛ばすだけで達成できる。
ボールは前進したが自分達のボールでは無い、となると意味が無い。
だから、失わずに前進することが必要となる。
これがビルドアップの考え方だ。
では、失わずに前進する方法は何があるか。
簡略化すれば2つしかない。
①前に進むパスを通す
②ドリブルで前進する
この二つだけだ。
色んな理論や戦術が世の中にはあるが、この二つをどう実現させるかという違いである。
そしてもう一つ大事な前提。
「サッカーは絶対的に攻撃側が人数有利」
これを知っておく必要がある。
実際の試合をよく見てみると分かるが、守備陣が攻撃陣に対して同数のDFで最初から最後まで守る、ということはなかなかない。
CBが一人カバーを取っていたり、DMFがバランスを取っていたりと後ろ側に人数が多くなるのがセオリーだ。
4バックに対して最初から4人ともマークに付かれる。
そんな状況は滅多に起こりえない。
有り得ない、といえないのはかつて10人フルマンマークという狂気を実行したチームがあったからだ。
閑話休題。
まずこの時点で、後方からボールを回すときに数的不利が発生しないことは理解してもらえると思う。
そしてGKの存在がある。
攻撃側のGKはボール回しに参加できるが、守備側のGKがマークに付くことはない。
だから厳密にボールに関われる人数を考えると、11vs10となるのだ。
以上のことから、ピッチ全体としては攻撃側が常に人数有利になることがわかる。
それを踏まえて、もう一度前進する手段を見てみよう。
①前に進むパスを通す
②ドリブルで前進する
この事実を知った後に手段を見ると、実行できそうな気がしてこないか。
相手の誰かがボールにプレッシャーをかければ、必ずどこかでフリーが出来る。
誰も取りに来ないなら、その選手がドリブルで前進すれば良い。
常にどこかにフリーがいる、はずだ。
それを見逃さない、そして味方がパスコースを作る作業をサボらなければ理論上ビルドアップは可能なのだ。
必要な技術、フィジカルは少ない
理論で上達出来ると確信しているもう一つの理由。
それは必要なものがシンプルだからだ。
長短の正確なパスと、周囲を見ながらまっすぐドリブルする技術。
どちらも決して特別ではないし、才能によって出来る出来ないが左右されるものでもない。
努力によって習得可能であり、サッカーの基礎技術に含まれるものだ。
逆に言えば、ある程度プレーを重ねている選手ならば既に身に付けている技術のため、考え方や頭の使い方の訓練次第で上達できるといえる。
というか、なんで失ってしまうのか分からず壁にぶち当たるのはしょうがない。
「出来ない」のではなく「方法を知らない」のだ。
今から知って、プレーとして実践できるようになればいいのだ。
ボールを失うのは、全て貴方が悪いわけじゃ無い
基本的に今まで見てきた育成現場、あるいはJリーグを見るファン。
彼らは意外と、共通したことを言う。
「何で失うんだ!」
「上手く繋げねえなあ」
こんな目線で指導者が発言していることが、実は少なくない。
問題点は山ほど有るが、選手にとって一番不幸なのは
「仕組み、原因を指導者が分かっていないこと」
これに尽きると思う。
なぜ失ってしまうのか。
受けるポジションが悪いのかも知れない。
前の出し手が、こちらの状況を見ずにパスを出した結果かも知れない。
他の選手がパスコースを作ってないからかも知れない。
もちろん自分がパスコースを見逃したり、間違った判断をしている可能性だってある。
では他の選手がパスコースを作っていなかったとして。
「周りが受けてやれよ!」
と怒鳴るだけでは意味が無い。
どんな考え方でパスコースを作るか、ということを日頃から指導していなくては、「何で失うんだ」と何ら変わりが無い。
教えられたことを元に成長するのが選手だ。
教えられていないことで怒鳴られても、貴方は気に病む必要が無い。
自分の中でだけこっそり反省すれば良い。
ビルドアップは他のプレーよりも、準備や思考のプロセスの比重が高いプレーだ。
時間のゆとりはゴール前の攻防に比べて遙かにあるし、その分見るものも考えることも多い。
瞬発的な思考、ひらめきやアイディアは必要無い。
だからこそ指導を受けられる環境は少ないかも知れないが、同時に自力で学べる部分も大いにあるのだ。
まとめ
・方法や理論を教えてもらえないのに怒られるような現場は多いのでは?
・サッカーは理論上、攻撃側の方が人数優位
・ボールを前進させる方法は二つ
①前に進むパスを通す
②ドリブルで前進する
・人数優位でこの二つを行うことが出来るはず
・突出した技術やフィジカル、才能を必要としない
・ボールを失う原因になるものは様々、指導者が見極められないこともある
→失って怒られても本当に悪いかは分からない
・考えて出来るプレーだから、勉強すれば上達する
蛇足・・・なぜビルドアップを選んだのか
ここからは蛇足、余談である。
なぜ数あるプレーからビルドアップを選んだか。
ただ頭脳で勝負できるプレーだから、だけではない。
才能を持たない一般人がサッカーを戦う上で必要なこと。
それは、正しい理屈だ。
よく机上の空論という言葉を聞くし、フォーメーション図を睨みながら議論している人に対しこの言葉と共に冷笑を浴びせるものも居る。
だが、サッカーにおいて理屈は大切である。
選手が動けるスピードも、守れる範囲も限りが有る以上は理屈と同じ動きを目指せば良い。
もちろん理屈通り全てが上手くいくわけでは無い。
しかし芯に正しい理屈がなければプレーの判断が出来なくなってしまう。
「DFがここに居てFWがここに居るなら、ここは守れないはず」
という正しい判断が出来れば、必ず勝利に近付く。
特に持たざるものは一人で何人も抜き去ることも出来なければ、ヘディングで他を圧倒することも出来ない。
それでもサッカーという競技においては、十分に戦える余地がある。
明神智和、遠藤保仁、中村憲剛、山田直樹、内田篤人、戸田和幸・・・
名を挙げればきりが無いほどに、頭脳で戦い続けた選手たちがいる。
彼らは自分達を盤上の駒と認識し、11人の集団における最適解のプレーを見つけることが出来る。
それは感覚では決して出来ない、頭脳に裏打ちされたプレーだ。
そして集団における最適解は、サイズを変え4人ほどの単位でも現れる。
タッチライン際での崩しと守備などは典型的なグループ戦術のぶつかり合いだ。
そしてビルドアップでもグループの崩しと守備でも、セオリーや理屈が存在する。
ビルドアップを通してサッカーにおける理屈の一片を理解できれば、それは全てのプレーに繋がる。
筆者はそう考えている。
だからこそ、もっとも理屈で理解できるビルドアップを紹介したい。
以上のことを踏まえ、次回からは実際にどう勉強するかを解説していく。
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