それでも、ドリブラーを目指しますか?③上達に一番大切な考え方について
※この記事はシリーズとなっていますが、単体でも参考になる物を目指しています。
①、②はこちらからどうぞ。
それでも、ドリブラーを目指しますか?②ドリブルは3種類に分けられる
さて、前回はドリブルを分類し必要なものについて考察した。
本稿はシリーズラストとして、「ドリブルの上達」というものを捉え直していこう。
サッカーの上達に大切なのは考え方、そして目標設定だ。
本稿を通じて、選手の財産となるドリブルが身につく手助けが出来ればと思う。
簡単な前回のまとめ
前回は、ドリブルを分類しそれぞれの特徴をまとめた。
そしてどのドリブルを一般的な選手が身に付けるべきか。
具体的には、スピードで他を圧倒出来る一部の才能ある人間を除いた大多数の選手が、どんなドリブルを身に付けることが成長に繋がるかという話だ。
分類できる種類は3つ。
1.抜き去るドリブル
2.かわすドリブル
3.前進するドリブル
そして1は肉体的素質の占める要素、3は戦術的要素ということでトレーニングで身に付けるのであれば2のかわすドリブルだという内容を解説した。
かわすドリブルの具体例
前回の記事でも貼ったが、この選手のドリブルが参考になるであろう。
名をジャック・ウィルシャー。
若干16歳でプレミアリーグにデビュー、18歳でアーセナルのスタメンへと登り詰めた。
身長は172cm、スピードもそれほどないということで肉体的には日本の選手も十分に参考にすることが出来る。
また、セスク、ダビドシルバなどスペインの中盤の選手にもかわすドリブルの名手は多い。
スピードが衰え始めてからのイニエスタも当然ながらお上手だ。
このように、スピードがなくドリブラーと呼ばれない中盤の名選手は、得てしてかわすドリブルが上手いことが多い。
奪われない、プレッシングに打ち勝てるというのは中盤にとって必須スキルなのだ。
どう身に付けるか?
ここまでの記事、並びに実際のプレー映像などでイメージは湧いてきていると思う。
では、このような技術をどうやって身に付けるか。
それが選手にとって一番大事な情報だろう。
ここからは、「選手が自主トレでドリブルを上達させる」という観点に絞って書いていく。
チームトレーニングの中だけでドリブルが上手くなることは難しい。
一般的な選手が、一般的なトレーニングを受けながら自主的にドリブルを練習する、そんなイメージだ。
ドリブルドリル、リフティングという存在
ドリブルの上達に関しては、とある記事を書いた。
こちらにはドリブルを切り取った指導法について記載している。
その中で、選手が技術を身に付ける上で参考になる部分があるためこちらに引用したい。
大事なのは
「何のためにこのドリルを行うのか」
「選手として成長するために何が必要か」
という目的、そして適切な手段としてのトレーニングだ。
ここを明確に理解しなくては、ドリブルが上手くなってもサッカーが上手くなることは無い。
日本において、ドリブルドリルというものは数多く存在している。
探せば種類は豊富に、しかも細かく教えているサイトや本も多いだろう。
起源というか、遙か昔1984年に開発され、今なお世界中に普及しているトレーニングメソッドの一つ
「クーバーコーチング」
から名を変え形を変えていると筆者は考えている。
また、様々な部位でボールを扱うなどの理由からリフティングをドリルトレーニングとして導入しているチームも多い。
静岡学園などはその筆頭だ。
「日本人はサッカーよりリフティングが好き」
とかつては揶揄されていたようだが、現在はどんな国の少年でも軽やかなリフティングをしている映像があちこちで見られるため、こと日本だけでは無いのだと思う。
「リフティング」
「ドリブルドリル」
この二大巨頭のトレーニングがテクニシャンを生み出す。
そう日本では思われていると筆者は痛感している。
野洲高校、聖和学園、静岡学園など目を引くプレーで有名になった高校が多いのもその一因だろう。
だが、ただドリルトレーニングを重ねるだけで上手くなると筆者は思えない。
ドリルトレーニングで上達するには、いくつか重要なポイントがある。
では、ドリルトレーニングでかわすドリブルを身に付けるにはどんなポイントがあるのだろうか。
ポイント①目的を決める
トレーニングには、必ず目的が存在する。
何を出来るようになるためか。
まずはそこを決めよう。
「ドリブルが上手くなるためでしょ」
間違いない。だがそこで終わってしまっては意味が無い。
ドリブルが上手いとはどういうことなのかを考えなくてはいけない。
ここで扱っているのは、かわすドリブルだ。
つまり奪われずに相手のプレスを掻い潜ることが出来るというのが最終的な目標となる。
次に、どうすれば奪われなくなるのかを考えよう。
プレスが早い場合、いちいちあの技でかわそう、この方向にかわそうと考えていては奪われてしまう。
プレスが来たがどうすれば良いか分からず奪われてしまった、というのはほぼ全員に経験があるのではないだろうか。
考えてドリブルするようでは遅い、というのがここから分かる。
咄嗟に、考えるより早く発揮できる技術がドリブルに必要なのだ。
ここで問題。
9×6=?
ほとんどの人が咄嗟に計算するよりも早く54と頭に出てきたのではないだろうか。
これは、九九というドリルトレーニングを何度も繰り返した結果、反射的に答えが出せるようになっているからだ。
ドリブルでも同じことをすれば良い。
相手が足を出してきた瞬間、考えるより早く最適なボールの動かし方でかわすのだ。
これを繰り返すことが出来れば、理論上ボールは奪われない。
ここから更にもう一段階、必要なことを考えよう。
「足を出してきた瞬間に適切な躱し方をする」
という一連の行為を分解すると
足を出してきたことを認識する
↓
適切な技術が反射的に出てくる
↓
DFをかわすことに成功する
という段階になる。
ここから分かることは、
・足を出してくるのを見なくてはいけない
・どうかわすか複数が体に染みついていないといけない
という要素だ。
更に当然ではあるが、サッカーとは味方がいるスポーツだ。
フリーな味方がいればパスしてあげれば良い。
自分より良い状況の選手にボールを渡すことは基本的に正解となる。
ドリブルでかわすことに必死になってパスコースを見逃す。
これはドリブルが成功したとしても、サッカーという競技では不正解だ。
結果かわせたからいい、という問題でも無い。
上記のことから、
「常に視野を確保すること」
がドリブルには必須であることが分かる。
まとめると、
「視野を確保しながら咄嗟に出せる技術を身に付ける」
というのがトレーニングの目標となる。
ポイント②実際に行うときの意識
目標設定が明確に出来たら実践していこう。
まずはどんなドリルを行うか。
題材はなんでも良い。
目の前で見て使えるな、と思ったプレーでも良い。
先程の映像から探しても良い。
咄嗟にこれが出たら便利だな、そんな動作を探そう。
こういったいわゆる「技」自体の解説はいくらでもある。
サイトでも、ストライカーDXでもいい。
また、ボールタッチ自体を上達させるために様々なタッチを織り交ぜたドリルなどもあるだろう。
タッチの向上という明確な目標を持てるのであればそれも良いかもしれない。
取り組むメニューが決まったら、それを行っていく。
意識するのは二つ。
1.常に視野を広く持つこと
公園やグランドであれば、周りの人が何をしているかとかどんな色の服を着ているか、何人居るか。
自宅の前であれば他の家の外装を眺めたりでもいい。
最終的な目標はボールに焦点を合わせずに行えるレベルまで達することとなる。
ボールに焦点を合わせず周囲が見れるということは、それだけ視野を確保できるということだ。
ボールを奪いに来る相手も、パスコースもスペースも、見なくてはいけないものがサッカーには沢山ある。
それらを見逃さないために、視野を確保する意識を常に持つ必要がある。
「ボールに視野を邪魔されない」
というのが目的となる。
2.実際の場面をイメージする
こっちからDFが足を出してきた、やべっ!
と思ってしまうほど具体的にイメージしよう。
脳内のイメージとはいえ、ただ行うよりも遙かに経験値を積むことが出来る。
実戦で何回もしたプレーが咄嗟に出るようになる、これは間違いなく似たような場面を経験したことによる経験値のたまものだ。
相手が居ない状況でもイメージすることで経験値を積み重ねれば、それは実戦で役に立つ。
この二つは同時には行えない
ただ、個人的な経験から言えることとして、これら二つは同時には行えないと思う。
理由は単純で、片方はボールから意識を切っても出来るようにする訓練、もう一つはボール付近に集中して実戦を想定する訓練と方向性が真逆だからだ。
だから、それぞれを独立して行うのが良いと思う。
まずはその動き自体が体に染みついていないといけないため、とにかく反復。
反復する中でボールを見ないように意識していく。
それが出来るようになったら、今度は実戦をイメージしながら。
相手がどんな風に足を出すのか。
もっと大きくボールを動かさないとかわせないか?
そんなことを考えながら行う。
これを繰り返すことで、動作が染みつく段階の一つ上、
「反射的に技術を発揮する」
というレベルまで磨くことが出来る。
これを繰り返したら、後は実戦で体が反応するか試していくだけだ。
まとめ
・ドリルトレーニングの目標を設定する
・具体的には
「咄嗟に、反射的に出来る」
「視野を確保しながら出来る」
・ドリルを行うときの意識すること
「ボールから目を切る意識」
「実際にプレスを受けるイメージ」
・それぞれ独立して行う
筆者の後悔
筆者は闇雲にドリルトレーニングを盲進し取り組んだ結果
「ボール遊びは上手いが実戦が下手」
という選手への道を突き進んでしまった。
動作自体、技自体が出来ても実戦で発揮できなければ意味が無い。
そんな後悔から、本稿において実戦で発揮できる技術の身に付け方を具体的に書きたいと決意した。
長文ではあるが、一つ一つ丁寧に具体的に書いたつもりである。
これを参考に、是非ドリルトレーニングを活用して欲しい。
そしてある日体が勝手に反応してかわせた!
そんな日が来たら筆者は至福の喜びだ。
コメント欄にご報告頂ければ幸いである。
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