現地観戦の時、どんなことを考えてみているのか。選手目線で観戦してみた。
先日、久しぶりにプロの試合を現地観戦する機会があった。
思えば高校生時代は時々サッカーノートを抱えて日立台に行ってたし、専門時代もビッグスワンに何度か行ったなあと思い出すと共に、
「どんな目線で現地観戦していたのだろうか」
ということを書き残せば、誰かの役に立つのでは無いかと思った。そこで5年ぶりぐらいのブランクを経て、久しぶりにノートとペンを持ちながら現地観戦をしてきた。意識したことは、上手くなるための観戦ということ。自分のプレーに活かすためにどう見るのか、という視点も含めてノートに書いたことをここで記事としてまとめ直したいと思う。
サッカーは、現地観戦で無ければ見えないもの、現地観戦だからこそ学べることがあると筆者は思っている。それを少しでもこの記事で伝えられたら幸いだ。
また、この記事はあくまでも現役の選手に向けて書いたが、サポーターの皆様にも参考になる部分はあると思う。是非読んでみて欲しい。
まず知って欲しいこと
まずは全体的にどんなことをノートにメモしたかとか、現地観戦で見るべきポイントとかそんな話から。
自分でも真似出来るところを探す
例えば、Jリーグ屈指のスピードスターの爆走ドリブルを見ても、自分がいきなり真似出来る、学べる部分は決して多くないと思う。自分が明日からのプレーに活かせるような要素を探しに行くと良いのでは無いだろうか。それは頭の使い方だったり視野の取り方だったりと、頭脳的な部分が多いかもしれない。あるいはボールに触るときの姿勢などの身体操作もあり得る。
自分の欠点が何か、どこを伸ばすべきか。それが事前に分かっていればより焦点を絞ってプレーを見れるようになるはずだ。
カメラに映らないもので、自分が見たいものを見る
普段テレビやDAZNで観戦しているときに、画面に映っているのはピッチのほんの一部に過ぎない。
せっかく現地で自分の見たいものが見れるのだ、いつもは見れないが気になっている部分をピックアップしておくのも良いだろう。
カウンターで前線が駆け上がるとき、バックラインはどんな形で押し上げるのか。ビルドアップで最終ラインがボールを持っているとき、最前線はどんな駆け引きをしてるのか。片方のサイドから攻めているとき、逆サイドの選手はどんな準備をしているのか。
ボールのない、普段画面に映らない部分に注目すると新たな発見があるはずだ。
プロになるためのレベルを知る
先程書いたことと真逆のようなことを言うが、自分が真似出来ない事を探すのも良いと思う。自分とプロがどれだけ離れているのか、どこが異次元だからプロになれているのか。そんなことを観察すると、長期的にプロになるという目標を持つ選手にとって具体的な指針を作る助けになる。
いずれにしても、
「事前に見たいものをある程度考えておく」
というのは大事だと思う。それによりセンサーが過敏になり、普段より発見できることが多くなるはずだ。
筆者のメモを細かく解説する
ではここから、現地で取ってきたメモを読みやすく、細かく解説していこうと思う。あくまでも筆者の見方であり、一つの視点として幅を広げるために活用して欲しい。目次に戻っていただいて、気になる項目から読んでみても良いと思う。
フィットネスレベルの違いをウォーミングアップで感じる
筆者は試合を見に行くとき、ウォーミングアップから見ることが多い。それはメニューを参考にすることもあるのだが、なんと言ってもプロの動作一つ一つを注目して見れるという楽しみがあるからだ。
ただの対面パスでも、プロが行うと一つ一つの所作が美しい。ボールはスッと止まるし、パスは芝生の上を綺麗に走る。
そんな光景を憧れと共に眺めるのがとても好きなのだ。
そしてこの日気になったのは、ステップワークだ。
試合開始直前、選手達はウォーミングアップの締めとしてステップワークからのダッシュを行う。この一連の動作が凄かった。
上手く言葉に出来ないが、脚が速いだけでは無い。もちろんダッシュの加速力も常人離れした人たちばかりなのだが、ステップを踏むときの股関節から下のしなやかさがとても印象に残った。まったく堅さを感じさせない、力みのない脚の動きはとても滑らかで見惚れる。
かつてマンチェスターユナイテッドのコーチか誰かが
「プロとアマの差は下半身のフィットネスだ」
と言っていたらしい。これはプロを目指した身として、確かに実感してきたことである。上に行くような選手は、身体能力と身体操作に優れていることが非常に多い。アジリティと筋力トレーニングは積極的に行っていくべきだろう。中学、高校の学生も早い時期からコツコツと適切なトレーニングをして欲しい。ウエイトトレーニングは積み重ねだ。アジリティも同様に、ラダートレーニングなど独力でも出来るものから少しずつ取り組んでみて欲しい。
今の状況だからこそ聞こえる、選手同士のかけ声
2021年5月現在、観客は声を出しての応援が禁止されている。そのため、今までの観戦とは違い選手や監督の声が大きく響くのを耳にすることが出来る。これがなかなか面白かった。
ビルドアップしていくシーンで、CBがSBに対して「もっと前取れよ!」と指示を出しているのを聞いたときには、確かにこの数mでいろいろ状況変わるよなと納得したし、気付きを得ることも出来た。選手が何を考え、何を要求しているのかというのは選手の脳内を知れる貴重な機会だ。是非聴いてみて欲しい。
あと個人的になるほどと思ったのが、プロレベルでもパスの出し手から受け手に対して「ターン、ターン」としっかり声かけしていたこと。当たり前のことを追求するって大事だよなと再確認させられた。
全てギリギリまで見て判断しているわけではない、決め打ちプレーも結構ある
筆者は現役時代、「プロはどれだけギリギリまで見てるんだろう、どうすれば見れるんだろう」とずっと悩んでいた。だが、改めて現地で見てみるとその思いは半ば幻想だったことに気付かされた。
プロといえど、ギリギリまでボールから目を切って判断するシーンはそこまで多くない。もちろんプロの中でも見れる選手見れない選手という差はあるし、その差が選手としての評価に結びついている部分もあるとは思う。だがそもそもプロになれる時点で化け物なのだ。彼らでもギリギリまで見ずに決め打ちでプレーしているシーンは、思っている以上に存在する。
ではその決め打ちの根拠はどこから来るのか、ということだが。
これは長くなるのでそのうち別記事にして書きたいのだが、サッカーが上手くなるためには視野を広げるのと同じぐらい
「3秒後の未来を正確に描く力」
が大切なのだと思うようになってきた。ギリギリまで見るだけでは無く、見ていたものから未来を推測して、その推測を元に判断を決めるのだ。この想像した未来が正しいからこそ、決め打ちでも間違いを犯さないのでは無いかと思う。
具体的なシーンを挙げれば、短めの縦パスを受けるとき。ボールが動いている間に後ろを見なくても、パスが出る前に見ておき、奪いにこれないという想像が働けばターンして前を向くことが出来る。
周りを沢山見ることと同じぐらい、「得た情報をどう活かすか」というのも大切なのである。全てを常に見なくても良い、そう思うと少し気が楽にならないだろうか。
いつ、どうやって周りを見ているのか観察する
じゃあどんな風に情報を集めているのか、気にならないだろうか。この疑問点はまさに現地観戦だからこそ答え合わせが出来る部分だ。
一人の選手をずっと追うと、首を振る、体の向きを変えるなどといった細かい動作一つ一つを見ることが出来る。
どんなパススピードの時にボールから目を切っているのか、周りを見るよりも確実なトラップをするのはどんなシーンなのか、という情報収集の細やかなヒントを得ることが出来ると思う。たとえ周りを見ていないように見えても、首は振っていなくても体の向きで視野に入れているのかもしれないし、あるいは首を振らずにしっかりとボールを見てミスしないことを考えているのかも知れない。そんな脳内を覗くようなヒントを得るために、じっくり観察するのはとても楽しい。
そうやって観察することで、「これだけしか見ていないのに正しい判断が出来るということは、判断の優劣は見る量だけでは無いな」と筆者は気付くことが出来た。現役時代に気付いていれば・・・。
凄く細かく見てたところを箇条書きしてみる
他、どんなところを見てたのかをずらっと並べてみたいと思う。
・体の入れ方。上手い選手は腰を割り込ませる。肩から行くのはバランス良くなさげ。
・トラップする足の場所。技巧派はやっぱり親指の母子球あたりで吸収してる。あんなんできねえ、練習たくさんしたけど俺には無理だった。
・一人に注目しつつ、他の選手との関係も見れるようになるとサッカー観戦はより楽しい。一人に焦点を絞りつつ周りもなんとなく見ておく。
・正しい半身のボディアングルを取り続けることの偉大さ。半身をキープしながら移動するには様々なステップワークが必須よね。
・どっち足にパスが欲しいとか、足下なのスペースなのか、そんな共通理解は阿吽の呼吸に頼っちゃ駄目だよなあ、ボディランゲージで伝えると成功率が格段に違う。
・トラップの瞬間、軸足が力んでる選手ってやっぱりいない。俺は軸足で踏ん張っちゃう癖があったけど、力を抜いてニュートラルポジションでトラップすることがトラップの質にも次のプレーにもダブルで影響するのでは無いかと想像している。たぶん踏ん張っちゃうのは不安なメンタルから来てたのだろう。
などなど。プロの動作を見る毎に自分の過去のプレーや記憶、ミスの歴史と照らし合わせていた。この作業、辛いけど楽しいよ。
プロの凄さを、自分と比較して目標にする
プロの凄さというのは、テレビよりも現地の方が遙かに分かりやすい。一番分かりやすいのは肉体。強そう。というか強い、分厚い。背も高い。
ボールを蹴る音も気持ちよくミートした低い音が響くし、トラップは我々が思っているよりずっと柔らかい。そんな動作全てがプロ基準という景色は、最高の教材であり心の栄養になる。
ボールを扱う技術だけではない。「これだけDFが近くても前を向くのかよ・・・」とか、「ジャンプしてのヘディングってこんな高いの!?」とか。探せばプロの凄いところはいくらでも見つかる。それだけ凄いからプロなのだ。
その基準を目の前で生で見る、それを体感するというのはただ刺激になるだけでは無く目標にもなる。特に本気でプロを目指す、あるいはその下のJFLクラスを目指そうという選手達にとっては辿り着かなくてはならない基準点だ。日頃の練習から「プロのジャンプヘッドはもっと打点が高かった」「このパススピードじゃプロならカットされてる」というように目の前の相手だけではなくプロの幻影と戦えるようになったら、成長のスピードは格段に速くなるはずだ。
この「長期的に具体的な目標をブレずに持つ」というのは筆者が出来なかったとても大切なことだ。忘れてしまいそうになったらそのたびにスタジアムへ駆けつければいい。いつでもそこには最高の質でプレーしている選手達が居る。
みんなスタジアムへ行こう
現地観戦はとても楽しい。非日常の空気は興奮するし、最高のお手本を目の前で満喫できる。
心の栄養に憧れを、頭の栄養にお手本のプレーを、それぞれ定期的に摂取することは君たちのサッカー人生を豊かにしてくれる。学びとモチベーション、それぞれに良い影響を与えてくれる現地観戦は、学生のサッカー選手にとって最高の場なのだ。たくさん足を運んで、たくさん知恵を盗んで、たくさんドキドキして欲しい。その効果は日々のトレーニングの濃度に表れる。熱い気持ちで毎日のトレーニングを燃え尽きるまで戦って欲しい。現役時代に悔いを残した筆者のようにならないで欲しい。そう願っている。
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