それでも、ドリブラーを目指しますか?①必要な才能とは

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サッカーにおけるスーパープレー、そして花形ポジション。

観客の目を引き、子供たちが憧れるプレイヤー。

 

それは、ドリブラーではないだろうか。

 

 

歴代に名を残したプレイヤーたちの名前を挙げれば、

 

マラドーナ
ガリンシャ
ロッベン
ロナウジーニョ
クリスティアーノ・ロナウド
メッシ
ネイマール

 

と、ボール扱いに優れたドリブラーが多い。

 

当然、サッカー選手を目指す子供たちの多くは憧れ、真似し、夢を抱くだろう。

 

読者の皆様の中には、日夜ドリブルのトレーニングに励んでいる選手も居るかと思う。

 

しかし、ドリブラーを目指すのは苦難の道のりだ。

 

このページではその難しさ、そして選手としての将来性について論じていきたい。

強豪校で夢破れた多くの選手を見てきた筆者だからこそ、生々しい現実を伝えたいと思う。

 

 

 

 

 

強豪校のドリブラー戦争

 

 

何度か書いているが、私の出身高校は八千代高校だ。

プロ選手を何人も輩出し、それを夢見て毎年50人近くが入部してくる、超大型部活動だ。

 

そして強豪校でサッカーに打ち込もうという選手の大半は、それなりに実績がある物だ。

全くうだつが上がらなかった私にしても、地区選抜には居たし一学年上の試合にもずっと出場していた。

千葉県には中学生クラブチームやJジュニアユースチームも多く、その状況に拍車がかかっていた。

 

更に言えば、

・ヴィヴァイオ船橋
・クラッキス松戸

というドリブル育成で有名なクラブチームが二つもあるのだ。

その結果、ドリブルや足技に自信のある選手が多数集まっていた。

 

そうすると何が起こるか。

ドリブラーというキャラクターのかぶった選手たちによる大戦争が行われる。

 

実際、私の中のドリブルに関する価値観の多くは彼らの苦難や挫折を見て形成されたものである。

彼らの生存競争を見て、全国レベルで通用するドリブラーになるために必要な要素を私は学んだ。

中学時代はドリブラーとしてプレーしていた私だが、その現実を見て即座に競争から撤退した。その判断は今考えても懸命だったと思う。

 

 

 

ドリブラーに必要な素質とは

 

 

では彼らの生存競争において、何が成否を分けたのか。

その要素は、ドリブラーとして大成する為の才能と言い換えても良い。

それらを一つ一つ挙げていこう。

 

 

①瞬発力、走力

 

ドリブラーとは、DFを抜き去ることでチャンスを作る選手だ。

どうしたって肉体的な素質が必要になる。

50m走のタイムと言うよりも、10m、5m。

一瞬の加速力でDFを置き去りにするためにはこの能力が欠かせない。

 

先に挙げた名ドリブラーもほぼ全員、スピードに優れた選手だ。

イニエスタもドリブラーとしての役割を担っていたころ、5m間の加速力であればメッシにも引けを取らないと言われるほどの能力を持っていた。

逆に言えばこのスピードという一点がズバ抜けて優秀であれば、ドリブラーとして大成する可能性は低くない。

かつて天才ドリブラーとして名を馳せ、高校卒業後すぐにアーセナルへ移籍した宮市亮も、圧倒的な加速力を武器に世界へと名を馳せていった。

ボルトン時代に見せたこのドリブルが、それを物語っている。

 

 

 

クリスティアーノ・ロナウドやメッシのスピードが凄まじいのは言わずもがな、ネイマールもそれは同じだ。

平均的なスピードの選手では、ドリブラーとして大成するのは難しいだろう。

 

 

 

②反射神経、動体視力

 

 

ドリブラーが目を引くプレーをする理由。

それはかつて流行った、派手なフェイントや足技が華麗だからかもしれない。

しかしそれらは全て、DFの重心を崩すための物だ。

 

DFの重心がズレた一瞬、それを見逃さずに加速し、正しい方向へボールを動かす。

それがドリブルでDFを抜くという動作の原点だ。

 

動作を成功させるためには、DFの重心の僅かな動きも見逃さない視野、そして動体視力が必要となる。

これはサッカーに必要な視野の広さとは全く違う、もっとミクロな視野の話だ。

 

ちなみにミクロとは細部のことだ。

対義語はマクロ、全体的という意味となる。

このミクロとマクロという考え方は、今後も使う機会があると思うので是非覚えて欲しい。

 

今回の話でいえば、正確な判断をするための視野の広さというのがマクロな視野。

それに対して、目の前のDFの状態を細部まで見ること。これがミクロな視野だ。

 

 

そして、今なら抜き去れる、と判断した瞬間に一気に加速する。

その一瞬を逃さない反射神経も必要となってくる。

 

反応が遅れたらどうなるか。

 

体勢を立て直した、万全の状態のDFに対して抜きに行くことは自殺行為だ。

ボールを奪われ、最悪の場合カウンターを招いてしまう。

 

スター選手の華麗な突破の裏には、こういった背景があるのだ。

 

 

 

ドリブラーはあまりにも狭き門

 

 

これだけの才能を持った上で、更にどれだけチームに貢献できるかが試される。

ドリブラーとは狭き門なのだ。

 

確かに派手だし格好いいしモテそうだ。

絶対キャーキャー言われるし。

高校サッカーでドリブラーなんかもう・・・

後輩女子とかが第二ボタンくださいって言うでしょ。

 

 

でも、その狭き門で本当にプロをかけて、レギュラーをかけて戦いますか?

 

特に足が速い選手は一度考えてみた方が良い。

その足の速さは、全国でも通用する物か。

それとも強豪校では埋もれてしまうような物か。

 

本当にドリブルで、生存競争を生き抜けるのか。

 

 

ドリブラーの需要は落ちてきている

 

 

そしてもう一つ言及しなければならないのが、ドリブラーの必要性だ。

特にここ数年で、ドリブラーという存在が少なくなってきた。

 

理由はいくつかある。

 

・守備戦術の浸透によるドリブラー対策

・個人に依存しない攻撃をするチームの増加

・複数人でサイドを制圧するスタイルの増加

 

ここら辺が主な理由になるだろうか。

簡単に言ってしまえば、タッチライン際で1vs1の勝負、という局面が年々減少しているのだ。

 

その流れの中で、ドリブルに命をかける選手をどれだけの指導者が評価してくれるだろうか。

自分の生きる道を狭めてしまうことを、筆者は懸念している。

 

 

なぜドリブラーは使いにくいのか

 

 

なぜドリブラーを目指すことに警鐘を鳴らしているのか。

そこには、ドリブラーのある「クセ」の存在がある。

 

それは、最初の選択肢がドリブルになることだ。

 

特にドリル形式のドリブルのトレーニングを多く積んできた選手に見られがちだ。

 

「簡単にパスで打開できる状況をドリブルで仕掛けてしまう」

「リスクを回避しないといけないエリアでもドリブルしてしまう」

 

これは体にドリブルという行為が染みついてしまっているが為に、とっさに出てしまうクセだ。

的確な判断が出来ないドリブラーは世界でも少なくない。

それでも彼らは特別な才能があったから許されていた。

逆に言えば、判断が多少悪くてもドリブルできるから評価される、という選手は各チームに一人居るかどうか。

 

J3まで全チーム含めても、50人程度ということになる。

 

ということは、凡人が目指すのにはハードルが高すぎるのだ。

 

 

 

 

余談、なぜこんな話をするか

 

 

ここからは余談だ。

興味のある人は読んで欲しい。

 

なぜこんな記事を書いたか。

 

Jリーグでは特に多い傾向だが、10代の天才のデビューと言われるような選手、それも18才以下のユースからの抜擢の多くはドリブラーだ。

体が軽くメンタルが強く、とにかくゴリゴリ仕掛ける。

そんな選手を多く見てきた。

 

しかし、そのままプロとして定着した選手はどれだけ居ただろうか。

 

ドリブラーとは、見た目の派手さと引き換えに、チームへの貢献が非常に難しい種族だ。

 

かつては、何度失敗しても点に結びつけば良いとされていた。

一度成功するまで何度もチャレンジしろと。

 

しかし現代はそれでは通用しない。

 

不用意なボールロストや無謀なチャレンジはチームを破壊してしまう。

ドリブラーが減り、シャドウストライカー系統の選手が増えたのはドリブルによる単独突破よりもチームとして点を取る形の作りやすさを重視する流れが影響している。

天才よりも、計算の立つ選手たちが需要があるのだ。

 

だが、ある程度成長しないとそれは見えてこない。

 

私だってクリスティアーノ・ロナウドに憧れてめっちゃシザースしてたし。

 

ただ、ドリブラーを目指すのを辞めることによるメリットは小さくない。

もちろん目指すのが悪いわけではない。

しかし、それは基本的に分の悪い賭けだ、ということを知っておいて欲しいのだ。

 

今後いくつか、ドリブルに関連した記事を書いていく。

 

その一連の記事によって、天才ではない選手がドリブルをどう捉えるか、どうプレーに役立てるか。

今までに無いドリブルへの考え方を伝えていければと思う。

 

 




 

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