育成年代が芝のピッチでプレーする利点、土でするべき工夫とは?自主トレに取り入れてほしい工夫も。

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日本でサッカーをしようと思ったとき、芝でプレーできる機会はどれだけあるだろうか。学校の部活であればほとんどが土の校庭、クラブチームでも芝のグラウンドを所有しているのは本当にごく一部である。結局、日常的に芝でプレーできるのはJクラブの下部組織や強豪の学校に限られているのが現状だと思う。

だが芝でプレーするメリットは、おそらく世間で思われている以上に大きいと筆者は考えている。そう思うようになったのは選手時代の経験からだ。ということで今回は芝でプレーすることのメリットを色々挙げていきたいと思う。

だがそれだけでは役に立つ記事とは言えない。そこで、土でもそのメリットを少しでも獲得できるような工夫を筆者なりに考えてみた。こちらも合わせて参考にしていただければ幸いだ。

 

 

 

芝でプレーするメリット

 

まずはメリットを挙げていきたい。これらのメリットを最初に感じたのは、高校時代にJ下部出身の選手達とプレーするようになったときだ。そしてそこから小中時代のJ下部のプレーを思い返して、改めてその差を痛感することとなった。選手目線で、実際に対戦したり一緒にトレーニングした中で感じたことを挙げていくので、机上の空論よりも参考になると思う。

 

①トラップする部位が変わる

 

筆者は高校卒業まで、ずっと土のグラウンドでプレーしてきた。土のグラウンドはボールがまっすぐ転がってくることが少ない。その結果、足だけでは無く足首やふくらはぎまで含めた面でトラップする癖がついた。こういった選手は少なくないと思う。

 

この止め方、簡単に言えば「脚でボールを止める」ということになる。何故こんな言い方をするのか、それは芝でプレーしてきた選手は脚だけでボールを止めることが無いからだ。

芝でプレーしてきた選手は、ほとんどが「脚と芝でボールを挟んで止める」という手法でトラップしている。具体的には、蹴球計画様のサイトに詳しい。

http://c60.blog.shinobi.jp/Entry/594/(新しいタブで開きます)

こちらをを見ていただけると分かるのだが、芝にボールを噛ませつつ上から足で押さえ込んでトラップ、というような止め方をすることが芝であれば可能になる。厳密に言えば土でも可能なのだが、習慣として身に付きやすいのは芝のグラウンドだ。そしてその時足に当てる部位は、おおよそが足の母子球付近である。

このトラップには多くの利点がある。それだけで一記事書けるほどなのだが、簡単に言えば足首の開き具合で角度を変えられるため駆け引きが出来るのだ。このトラップの駆け引きはジダンが得意としていたプレーでもある。

他にも沢山メリットはあるのだが、ここではひとまず「足と地面を利用してトラップする」という手法に大きなメリットがあること、ボールの転がり方の関係で芝のほうがその習慣が身に付きやすいこと。この二つを知っておいてほしい。

 

②ルックアップの習慣が身に付きやすい

 

これもボールの転がり方の関係。いつ何時へんてこなバウンドをするか分からない土のグラウンドよりも安定して転がる芝のグラウンドのほうが周りを見る習慣が身に付きやすくなる。

基本的にルックアップという動作は、一瞬ボールから目を離す動作だ。なぜ目を離してもトラップできるのか、と言えばボールの転がる先を予測して足を置いておくからである。予測通りにボールが転がってくる、という信頼がグラウンドになければ成り立たないともいえる。もちろん完全に目を離した状態でトラップするわけではないから、理論上は土のグラウンドでもこちらも可能だ。だがトラップの部位と同様に習慣化のハードルが低いのは芝である。幼少期から安定したボールの軌道でプレーすれば、ボールを扱うことに対するストレスも大きく軽減できる。このボール保持時のストレスという観点は別記事にしたので、こちらも参考にしてほしい。このストレスを感じない選手が増えるということは単純にレベルの底上げにつながるのだ。

 

③パススピードの上昇によるスキル上達

 

これは芝の状態に大きく左右されてしまうのだが、サッカーがプレーできるように管理された芝はよくボールが走る。さらに言えば、軽く水を撒くだけで更にボールスピードは上がる。

普段の練習でボールスピードが上がるとどうなるか。より速いパスを止めるトラップが上達するし、GKも速いシュートを止められるようになる。守備はスピードあるパス回しに対してより素早い対応が必要になる。
更にもう一つ大きなメリットとして、キック力が無くても遠くの味方までパスが通せるようになるという点がある。これにより、土では見る必要のなかった範囲まで「観る」必要性とメリットが出てくる。視野が広い選手が育ちやすくなる可能性はおおいにあるだろう。パスが速くなるだけで、これだけのメリットが得られるのである。

 

土のグラウンドで出来ること

 

ここまで、芝でプレーすることのメリットを見てきた。まとめてしまえば、

・繊細なトラップが身に付く
・ボールから目を切る習慣が身に付く
・ボールスピードが上がり、プレーの質が変わる

という点になる。これをどう土でも再現するかという点だ。

 

トレーニングシューズの活用

 

サッカーをプレーするときに履く靴はスパイクだけではない。トレーニングシューズ、通称トレシューと呼ばれる便利なものがある。足裏の部分が歯ではなく凹凸で滑りにくくしたものだ。

 

こういったシューズは小学生が使用することが多い。足への負担を考えてのチョイスである。だがこのシューズを中高生が活用することで、土のグラウンドでも工夫が出来るのではないだろうかと考えた。具体的に中身に触れていこう。

 

トレーニングの一部をトレシューで行う

 

ウォーミングアップで行うようなパス&コントロールであったり、負荷を低めに設定したトレーニングの日に行われる技術のトレーニングをトレシューで行う。これにより、土のグラウンドでもトレーニング前にしっかり整備すれば平らな地面を保ったままボールトレーニングをすることが出来る。ドリルトレーニングをこの状態で行うことが出来れば、バウンドの変化を気にせずに取り組むことが出来る。目を切ってのルックアップを習慣化するには最適な環境が作れるのではないだろうか。また育成年代の選手にとって過負荷は深刻な問題となるため、トレシューでトレーニングする時間を作ることによって負荷の軽減も可能となる。

場合によっては狭いピッチで行うミニゲームもトレシューで行ってもいいだろう。技術トレーニングで習慣にしようとしているルックアップを実戦でも使えるようにするためには対人が必要不可欠だ。もちろん正規ゴールを使うような強度の高いトレーニングはトレシューで行うのは難しい。だからこそミニゲームを利用して習得させるというのが必要になってくると思う。地面の凸凹を作らず対人形式を行うにはトレシューが最適なのだ。

 

自主トレも考え方は同じ

 

選手が自主トレに取り組むときも考え方は同じだ。いかに土の表面のコンディションを保ちながらトレーニングするかという点を大事にしてほしい。そして足への負荷も軽減できるのは大きな利点だ。筆者は高校時代毎日スパイクで自主トレしていたが、今思うと負荷が高かったから毎日足裏がパンパンに張っていたのだな、と理解できる。また蛇足ではあるが、スパイクを使用した自主トレよりもトレシューのほうが金銭的な負担も少ないだろう。

・土の状態がいいところで、凹凸を作らずに
・足への負担を軽減しながら

といういいとこどりが出来るトレシューの自主トレは、本当にお勧めだ。

 

環境の変化を待つより自力で出来ることを

 

今後、日本でもエリートではない選手たちが芝でプレーできる機会が増える未来、それが来れば一番いいことではある。だがそれを待つだけでいいのだろうか。土でも出来る工夫を取り入れることで、指導の質や自主トレの質を上げることが出来る。環境を変えるということ、ハード面の整備というのは簡単ではない。行政が取り組むレベルの規模の話だ。だから今は、一人一人が出来ることを取り入れてほしい。特に町クラブや競合ではない一般的な部活の選手たち。工夫次第でもっとサッカーはうまくなれる。がむしゃらに頑張るのも大切ではあるが、どうすれば上達のスピードが上がるかを考えたときに、今回の記事は明日からでも取り入れられるものになっているはずだ。選手の皆さんには是非取り組んで、筆者が習得できなかった技術を身に着けてほしいと切に願っている。




 

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