理屈でサッカーしたければとにかく技術を磨かなくてはいけない理由
筆者は現役時代、「全てのプレーが説明できるように理屈でプレーする」というテーマを持ってトレーニングを続けていた。それは筆者が戦術オタクであること、才能が無かったため直感やセンスでプレー出来なかったことなどが原因ではあるのだが、それが結果としてチームメイトの相談役になったりこのブログに役立っていたりと、サッカーを言語化することに繋がったのだと思う。
だが同時に筆者は理屈は理解しているがプレーで表現できないという悩みをずっと持つこととなった。そこで今回は、理屈でプレーするために必要なことを伝えたい。といってもタイトルに書いてあるように技術が全てだ。その理由を細かく書いていきたいと思う。筆者は自分で言うのもなんだが、それなりにサッカーの勉強というものをしてきたという自負がある。そんな私がなぜ選手として大成できなかったか、その理由を詰め込んだ記事になるだろう、是非役立てていただきたい。
「理屈でサッカーをする」とは
まずこの言葉から簡単に説明したい。
そもそも筆者には、サッカーの才能も身体能力の素質も無かった。だから上のレベルに挑むためには頭で勝負するしか無いと考えていた。判断のスピードや正確性、ポジショニングで戦おうとしていたのである。そのためにサッカーについて考えたり勉強してきた中で、
「プレーの結果には原因があり、理屈でプレーが出来る」
という持論を持つようになった。サッカーには明確に一つしか無い正解はないが、セオリーであったり有効なプレーというのは確かに存在していると今でも思っている。それを見つけ出し実行することがプレーの質の向上に繋がるという考え方だ。最近ではリカルド・ロドリゲス監督率いる徳島ヴォルティスのプレーなどから、理論でサッカーをするという行為について議論がよく交わされるようになってきていると思う。即興と創造性だけに頼ったサッカーから脱却する流れがプロでも起きているのだ。プロになれるような才能を持った選手達の戦いでもそうなのだから、部活動に打ち込む学生にはより効果が高いだろう。また、一時期盛んに言われた「サッカーIQ」という言葉も似たような意味を持つ。どんなプレーを判断するか、どれだけ先を読めるか。そんなイメージを持ってもらえれば良いと思う。
なぜ筆者は苦労したのか
ではそれだけ必死に勉強した筆者はなぜ大成せず苦労し続けたのか。もちろん勉強自体が間違っていた部分もある、と今は思っている。だが自分より上手い選手でも自分の方が理解は出来ているな、と思うことも多々あった。そんな選手になぜ質で負けたのか、という点をお伝えしたい。この点を通して理屈を実現するために必要なことが伝わるはずだ。
①単純な技術の低さ
これは非常に簡単な話。するべきプレーが分かっても実行する能力が無ければ何も出来ない。ごく簡単に例を挙げれば「狭いスペースで受けて前を向く」というプレーは相手の守備に対して効果的だ。だが狭いスペースでトラップできる技術が無ければ実現することは出来ない。
これに関してはとにかくトライ&エラーしか無い。その際に必要なのは、「判断は正しかった。あとは精度を付けるだけだ。」と自分のプレーを正しく認識、反省することだろう。
②状況把握が出来ない
理屈でプレーするには、当たり前だがピッチ上の情報が必要だ。誰がどこにいて、ボールがどこにあって、どんな状態なのか。この情報収集、状況把握というのが大切になってくる。指導者が「もっと見ろ!」「視野を広く!」と呼びかけるのもこれが理由である。だが技術が無くては情報を集めることが出来ない。ドリブルが下手では顔を上げながらドリブルが出来ないだろうし、トラップが下手ではボールに集中しすぎて状況の変化を見ることが出来ない。技術は高ければ高いほどボールを意識せずに、違うものを見たり違うことを考えたり出来る。それに関しては弊ブログのこの記事も参考になるだろう。
→足下の技術を磨く一番の利点は「ボール保持時のストレスを無くす」ということだ
情報とは判断の根源だ。いくら知識や戦術理解が優れていてもプレー中に情報が無ければ活かすことは不可能。だから情報をより集めるために技術が必要になってくるのだ。
筆者の苦労を細かく説明
では技術を欠いた筆者はどのように苦労したのか、ここからは体験談として書いていきたい。
守備は苦手では無かった
筆者は守備が好きだったし苦手では無かった、と自分では思っている。散々苦労した地域リーグ時代もスタメンを張ってたCBの選手に守備に関しては褒めてもらえていた。サッカーに関する数少ない良い思い出だ。
なぜ守備では貢献することが出来たのか。それは勉強したことをしっかりとプレーに発揮できていたからだ。とにかく首を振り、周囲の状況を把握し、相手の狙いを考えながら勉強してきたことと脳内で合致させるという作業が出来ていた。それを繰り返すことで、情報収集した時点で最適解をある程度出すことが出来るようになっていた、と思う。これは高校時代からそうで、CB、SB、ボランチ全てをプレーした経験が活きていると思う。もっと言えば、中学1年までGKとしてプレーしていたことも大きい。一番後ろからサッカーを沢山見てきたというのは大きな財産だ。
攻撃では全く発揮できない
だがこれが攻撃では全く無力だった。原因は今ならはっきりと分かる。技術が足りなかった。厳密に言えば、
・技術
・プレス耐性
・メンタルの強さ
この3つが足りなかったと認識している。そして全ては一つ目に挙げた技術不足が根本の原因だとも。
攻撃時には、パスが来る前に見るだけでは情報が足りない。パスを出す前とトラップする瞬間の間、その数秒に状況は変わる。というよりも判断に必要な材料はこの数秒に詰まっていることも多い。DFラインでのボール保持はしっかりと見てプレーすれば良いが、DFラインからボールを受ける人はパスする前に守備の配置を見た後、その守備がボールを奪いに来るのか来ないのかを見ないとターンするかの判断が出来ない。奪いに来なければ前を向くべきだし、来ていればリターンしてやり直す、あるいはプレスを交わしながら前を向くテクニックを発揮する必要がある。
判断をチャート化してみる
チャートでなんとなく整理してみた、あくまで一例だがこのチャートをどう選択するか、その要因はボールの移動中に見なくては分からないのだ。
赤枠の部分が、事前に見ておけ!とよく言われる部分、青枠がボールの移動中に見るべき部分だ。筆者はこの情報収集が苦手だった。高校の時に前を向こうとしてボールを何度も奪われ、
「お前にそんなプレー期待してねえんだよ!」
と怒鳴られてから安全なプレーしか選択しなくなったのが原因、かもしれない。結果的に縦パスを受けるときに背後の状況を確認できず、前を向くべき時に前を向けない選手になってしまった。プレス耐性が低く、奪いに来られると軽くパニック気味になってしまうのも相まってだ。これが筆者のメンタルがもっと強くて、「監督に怒られようが何回奪われようが、絶対に習得してみせる」という意志を貫徹出来れば克服できたのかもしれない。だから先ほど原因のところにメンタルも挙げたのだが、結局は技術が大前提だったと今でも思っている。
技術と理屈は土台になる
理屈を理解していても、技術が無ければプレーに活かせない、と言うことがおわかりいただけただろうか。一方で技術を持っていても正しい理屈が分からなければ判断をミスしてしまう。どちらが大事か、ではない。どちらも大事なのだ。両方を持っていて初めて選手としての土台が出来る、と筆者は思っている。
確かに技術とセンスだけでどうにかしてしまう選手は居る。だが彼らが正しい理屈を身につければ、より合理的で素早い判断が可能になるし、効果的なポジショニングを取れるようになるはずだ。他の選手との差を理屈で埋められるとは限らない。だが理屈でプレーしていない自分と理屈を分かった上でプレーに適用する自分ならば、確実に後者の方が良い選手だ。
自分の成長のために、理屈でサッカーをするということにぜひ取り組んでみて欲しい。それこそ今のJリーグで言えば、徳島、C大阪あたりは非常に良い教材となるだろう。トレーニング外の時間でも取り組めるのが理屈の勉強だ。そして理屈を身につけ、自分のプレーに活かすヒントをこのブログにひたすら書いてきたし、これからも書き続けたいと思う。
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