サッカーを見る訓練をしてみようという話と、具体的な方法について
少し前になるが、質問箱にこんな質問を頂いた。
一度実況解説の音声を消し、Twitterを見ずに自分の脳内だけで見てみると面白いですよ。あとは同じ試合を二回見てみるとか。 #Peing #質問箱 https://t.co/zQe9oyg2ao
— 山田有宇太 (@Grappler_yamayu) November 29, 2020
筆者のサッカー観は多くの観戦によって形作られてきたと思っている。プレーには活きなかったかもしれないが。
サッカーを学ぶために、観戦時に色んな試みをした経験が筆者にはある。どうすればよりサッカーを理解できるのか、自分のプレーに活かせるのか。
そこで今回は、筆者の取り組んできた試みの中から効果があったと実感したものを紹介したい。これは選手に限らずサポーターの方や指導者の方の参考にも鳴るのでは、と思う。お役に立てれば幸いだ。
自分で考える、ということ
サッカーを観戦しているとき、人は自分が思っている以上に情報に左右されるのだな、と思ったのが筆者が観戦方法を模索するようになったきっかけである。
筆者は元々周囲の人よりも試合を多く見る方であった。実家がJSOPRTSを見れる環境だったこともあって海外サッカーJ1リーグ問わず多くの試合を見ていたと思う。
当時はDAZNなどなく、JSPORTSでプレミアリーグを見てJSPOとスカパーでJリーグを見てWOWOWが見れないからリーガが見れないよ!と嘆く日々であった。当然家でしか見れない。今の環境は観戦に関しては恵まれているのでは、と思うこともある。
以前、観戦については記事をいくつか書いた。
これらはプレーに直接活かす、いわばミクロ視点での観戦やプレーの観察方法だ。今回お伝えしたいのはマクロ視点、チームとしての動きや戦術といった部分を見るための方法になる。
試合を見るとき、大体の試合には実況と解説が付いている。またTwitterを開けば多くの人が試合内容について言及していることもあるだろう。
それらの情報は参考となる一方で、バイアスがかかってしまう場合もある。解説を真剣に聞いていなくても、無意識に耳に入ってくれば自然と理屈に納得してしまう。結果として実際に試合で起きている現象では無く解説の発言やTwitterで見た内容を優先して認識してしまう。これは筆者が実際に経験したことだ。
このとき、自分は自覚している以上に試合そのものを見れずに情報を摂取してしまっているのだな、と痛感した。
そこで筆者は
「どうすれば自分の中で考える訓練が出来るのか」
「どんなところに着目すれば良いのか」
ということからまず考えるようになり、そこから色んな手法を試すようになった。結果的に試合の中で発生する色んな事象を見出す力が付いたと思う。
「言われて気付く」というところから「自分で何かを見つける」という段階にステップアップするとサッカーを見るという行為は飛躍的に楽しくなる。だからこそ是非参考にして欲しいと思う。
試合を見る手法を変える
まずは見る手法そのものを変えるという提案をしたい。普通に試合を見ているときとは違った視点や気付きを得られるはずだ。
手法①実況の音声を消す、SNSを見ない
まずは周囲の情報を遮断するところから始めると良いと思う。
得られる情報は試合の映像のみ。その中で自分がどんなことを見て、なにを考えているのかが見えてくる。
自分が見たものから導き出せる推測が、今自分で発見できることだ。まずはそれを自覚した上で、より多くの事象を発見できるように取り組んでみると良いのではないか。
この観戦法を行ってみると、いかに普段実況や解説に自分の思考が流されているかを実感できるのも良い点だと思う。
例えば解説が「いい距離感でパスが回せていますね」と発言したときに納得して終わってしまうのか、自分でなぜよくパスが回っているのかをもう一歩踏み込んで観察できるか。フォーメーションや配置が換わったことに解説が触れて初めて気付くのか、自分の目で発見することが出来るのか。
今よりも見えるもの、見つけるものを増やしたいという人は情報を遮断し、独力で試合を見るという挑戦をしてみよう。
手法②知らないチーム同士の試合を見る
普段見慣れている国のリーグやビッグマッチは、どちらかのチームの特徴やスタイル、組み合わせによっては両者どちらも勝手知ったるチームという可能性がある。
それぞれの特長を知った上で試合を見るのも非常に面白いのだが、サッカーを見る訓練としては両者ともに知らないチームの試合を見てみることをおすすめする。更に言えばこの組み合わせの試合を、上記した音声や周辺の情報を遮断しながら見てみると面白い。見たことの無いリーグの試合や国内カップ戦の下部リーグ同士の試合などが該当するだろう。正月限定にはなるが高校サッカーなども似たような状況になる。
事前情報が無いということは、試合中に両者の特長やスタイル、強みとなる選手などを自力で発見しなくてはいけない。それぞれのチームが何を狙い、どんなトレーニングを積んできたのか。事前情報が無い中で自分の脳をフル回転させる観戦は楽しい。
手法③早送りしながら見る
これは筆者が一時期好んで用いた手法である。
特にPCでDAZNを見るときにChromeのアドオンを活用することで容易に出来るためおすすめできる。
基本的には1.5倍速か2倍速で試合を流す。それをただ見るだけ。方法としては非常にシンプルである。
より速い速度で試合を見ることに寄るメリットは、とにかく全体の陣形の変化が分かりやすいことだ。一つ一つのドリブルやパスと言った細かい動作よりもチーム全体の動きに注目しやすい。チームの動きを学んでみたい、どう見ればいいか分からないという人は早送りで全体を見るという練習をすると理解が進むと思う。ついついボールの周辺ばかりを見てしまう、という癖の矯正にも是非。
また、時間が確保できないが色んなチームのスタイルを知りたい、という人にとっても観戦時間を圧縮できるため役に立つだろう。
手法④同じ試合を繰り返し見る
これは忍耐がいる手法だ、もはや研究や修行に近いかもしれない。
何度も、とは言わない。同じ試合を二回見てみるだけでも新たな発見が間違いなくある。そもそも一度の観戦であれだけの人数が動き回るのを把握するのは相当に大変なのだ。今でも全てが見えると思ったことはない。
だからこそ、少しずつ着目する点を変えながら見てみると見れなかったものが見えるようになってくる。
そしてもう一つの効果は、先を知っているから目をそらせると言うことだ。サッカー観戦というのはドキドキして面白い、これは皆同意してくれると思う。だからこそボールから目が離せなかったり多くのことを考えるのが難しい。
だが二度目の観戦となれば完璧には覚えていなくてもおおよその展開を覚えていたり、「あっこのシーンは見たな、こっちにパスしてカットされるんだよな」と記憶に残っているシーンが出てくる。そうなると人間不思議なもので、ボール近辺以外にも目が行くようになる。結果を知っているから気にならないのだ。
それを利用することで、普段の観戦では発見できないようなプレーの原因や選手の意図、チームの連動など様々な発見をして欲しい。
観戦も量と質が正義
観戦力、という言葉があるのかどうかは分からないが、サッカーを見る目を磨きたい理由は人によって違うだろう。もっとサッカーを深く理解したい、自分のプレーや指導に役立てたい、応援しているチームがどんなサッカーをしているのか知りたい、などなど立場も目的も様々あると思う。
だがサッカーを見る、という行為を突き詰めることで人よりも多くの事象が見えたり因果関係を理解できたりと向上する部分はある。そしてそれは量と質が正義だ。ぼーっと見ているだけではなかなか向上しないが、あれこれ考えるだけで量を見ないことには磨かれない。
いろんな手法を試し頭を抱えて唸りながら、でも立ち止まらずに沢山試合を見て欲しいと思う。そのうちだんだん見えるものが変わってくるはずだ。
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