「日本人は技術が高いのが特徴」って本当かって話

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だいぶ前に着手していた記事ですが、投稿が大幅に遅れてしまった。時期を逃したものではあるが仕上がったので記事として残しておこうと思う。

 

東京オリンピックで、サッカー日本代表は4位という結果を残した。

開催国というアドバンテージ含め、様々なものに恵まれたのも事実、だが世界で通用する部分が見えたのもまた事実、そんな風に筆者は見ていた。

 

そのオリンピックを受けて、Twitterでお世話になっている「とれぱん先生」が、こんな記事を投稿されていた。

 

【雑感】3位決定戦 日本-メキシコ/これのどこが「日本人は技術がある」と言い切れるがけ?

 

この手の話、割と小さい頃から日本人の特徴として扱われていた気がする。

 

ということで今回はそんな話を。どちらかと言えばサポーターの方向けの記事かも知れない。選手や指導者は現場で痛感しているだろう。だからこれは、議論に疑問を抱いた人に向けて、回答になれば幸いだ。

 

 

根拠がよく分からない

 

まず、JFAのページを改めて見ると

体格やパワーで勝るわけではないですが、技術力(足首の柔軟性等)、俊敏性、組織力、勤勉性、粘り強さ等、またフェアであることがFIFAテクニカルレポート等でも認められている日本の特徴です。

と記載されている。

このFIFAレポート、探しても閲覧する方法がよく分からなかった。詳細を知っている方がいたら是非教えて欲しい。

 

で、個人的に代表やいろんなサッカーを20年近く見てきた印象として、根拠になりそうなものを思い付いた。

 

海外移籍した選手がテクニシャン説

 

海外で結果を残してきた選手の多くが、技術に特徴がある選手なのでは、という説。

名前を並べれば真っ先に挙がるのは小野伸二、中村俊輔、中田英寿、稲本潤一、高原直泰と言った黄金世代が中心になるだろうか。

確かに小野や俊輔はテクニシャンと呼べる名手だ。だが稲本や中田はむしろフィジカルと頭脳で戦っていた印象がある。ただこれは筆者が小学生時代の話であり、おぼろげな印象でしか無い。

 

次に名前を挙げられるとすれば、アテネ世代になる。この世代にも若くして海外に挑戦した選手は多かったが、定着したと言えるのは松井大輔ぐらいだろうか。彼は日本人でもトップクラスのテクニックの持ち主だ。リーグアンでの素晴らしい活躍は語り継がれるだろう。

 

その後を見ていけば柿谷、原口元気、宇佐美、小野裕二、武藤嘉紀、柴崎岳、堂安律、久保建英、というメンツになる。

確かにイメージとして、テクニシャンだったりドリブラーだったりという選手が多い。

 

よく言われる「相手の居ない技術は高い」

 

日本代表について、これも10年以上ずっと聞いている気がする言葉がコレだ。

言い換えたバージョンとして、

「テクニックはあるがサッカーが下手」

という言い方もある。

どちらにせよ、ボールの扱いは上手いのに試合では通用しない、という意味合いで使われることが多い。

 

 

本当に技術が高いのか?

 

今回はこの言葉に真っ向勝負してみようと思う。

というのも、そもそも技術という言葉が抽象的なものであり、いろんな解釈の仕方が可能だ。だからこそこの手の議論をするとき、解釈が人によって違うため議論がなかなか発展しない、という光景を何度か見かけた。

 

なので今回は、この言葉の解像度を上げていこう。

 

 

技術の中身を考える

 

一言で技術、といっても内訳は様々だ。

ボールを扱うスキルに限定してもトラップ、パス、シュート、ドリブル。更にその中にも細分化がされていく。

つまり技術がある、と大雑把にくくってしまっては強みも弱みもぼやけてしまう。

 

通用していた技術

 

今回のオリンピックで言えば、通用していたのは間違いなく久保堂安を中心にしたショートカウンターだ。

この二人のスピードを上げた中で発揮する技術の高さは、間違いなく日本にとって武器だった。それを前面に押し出すチーム設計にしていたわけだ。

足下にボールがある状態でボールを扱う技術に関しては、レベルが高い選手がいることを証明できたと思う。また先に名前を挙げたような歴代の選手に対してもそれは同じような評価が出来るだろう。

 

あとはアドリブ力と言ってもいいが、多少強引に一人一人でどうにかする力というのはあるかもしれない。

そのアドリブ力が噛み合うと素晴らしい密集パスワークになるが、噛み合わないと敗れた試合のようになるのだと思う。このアドリブ力のベースも、ボールを扱う技術ではある。

 

足りない技術

 

その一方で、代表に限らず日常と言える国内リーグも含め思うことがある。

それは、わかりやすく言い切れば「キックとトラップ」である。

 

精度は高いと思う。優秀なプレースキッカーも多く排出されたし、小野伸二のパスやトラップはその柔らかさから賞賛された。

だが筆者が物足りないと思うのは、スピードだ。

特に20m以上のパス。強豪国と言われる国はおおよそこの距離を速い球速のインサイドパスで通す。この距離のインサイドパスが日本人は得意では無いなと思う。

それは速ければ通るパス、とかよりも横に動かすパスで強く感じる。ボールを横に動かすのだが、ボールのスピードが速くないから相手のスライドも間に合ってしまう、という光景を見かける。

綺麗に地面を走るボールで無くても良い、多少乱暴でも良いから速いボールで動かせるようになると良いのでは無いかと。

 

あとは30m越えのロングパス。これももっとライナーで当たり前に蹴れると良いなあと思う。

ふわりとしたサイドチェンジは見てて綺麗だし、受け取る側にも優しい。けどDFからしたら対応できる猶予を貰えるし、インターセプトだって狙える。

ギリギリDFの頭を越えるようなロングパスが蹴れるようになると、より相手を動かせる。

 

この二つの共通点は「スピード」です。

あと強いて言うならシュートもか。速いシュートを撃てる選手というのが増えて欲しい。

 

日本ではキックを重視しない?

 

ちょっと語弊があるとは思うこのタイトル。

ただフリーキック以外のキックってそこまで注目されてないというか、評価されてないというか。

フリーキック、スルーパスあたりは脚光を浴びるんですがそれ以外の地味なキックのレベルが上がって欲しいと思っています。

 

日頃のパスがちょっとずつ速くなって、トラップもそれに対応してちょっとずつ上手くなって、サッカーを高速化出来るようになったら間違いなく戦えると思う。

風間八宏の指導はよく「トメルケール」と揶揄されるが、そのレベルで追求した結果プレーの質が大きく替わった選手だっているし、筑波出身の選手の評価も非常に高い。むしろ風間さんの指導に関してはトラップが強調されているが、間違いなくパスについても要求されているはず。

それでも、もっと速いボールを蹴れるようになって欲しいと筆者は思っている。筋力や体格の差、で片付けてはいけないと思う。プレミアリーグにはかつて、日本人とそこまで変わらない体格で活躍し、プレミアのパススピードに適応した選手がたくさんいる。バルセロナにしたって、体格はそこまで変わらないだろう。

となれば、もっと追求するべきなのだ。これは武器になるより先に、標準装備として身につける物なのかも知れない。いずれにしてもJFAが公言するような結果を目指すのであれば、一つ一つのキックの質を突き詰める必要があると思っている。

 

そういったキック、トラップの質に関して言えばまだまだ世界との壁はあるかもしれない。技術の中でもここは武器とは言えない部分だ。

 

 

まとめ「技術の中でも武器と欠点がある」

 

ということで、簡単にまとめてしまえば

・技術と一口に言っても色々ある
・ボールを扱うことに関してはレベルが高いと言える
・キック、トラップに関してはまだまだ追求の余地あり

という事になると思う。これを解像度を上げずに一言で片付けてしまうと、見えなくなるものが多い。

もちろん現場で戦う選手や指導者の方はこれらを痛感していると思う。これはどちらかと言えばサポーターの方向けの記事かも知れない。

 

だがこういったことを考え、あるいは知った上で試合を見るとまた違った見方が出来るようになると思う。

どんな技術が通用していて武器で、どんな技術が足りないのか。注目して観戦することで、皆様の議論の助けになるはずだ。

 

 




 

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