【掴み所がない】2022カタールW杯 ラウンド16 ブラジルvs韓国の感想【それは対応力かもね】

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現在開催されている、2022カタールワールドカップ。

Twitterで始まった、面白い取り組みが現在展開されている。

それが、「ワールドカップアーカイブ化計画」。

 

 

グループステージから全試合、担当者を決めて観戦記事を書き、そのリンクを集めてアーカイブ化しようという試み。

これは別記事にて紹介しようと思っているのでここでは簡単に済ませるが、

・筆者は自分のプラットフォームで書ける
・記事のリンク及びAbemaの視聴リンクが集まっている
・執筆者は一人とは限らないため、複数の視点から書かれた記事が読める、かつ探しやすい

と非常に優れた形になっている。

 

そして光栄なことに、グループステージが終わった段階でお声かけいただき、メンバーとして加わることになった。

ラウンド16からは、試合では無く国毎に担当が決まり、それとは別に各人自由に書いていくという、より多数の視点から記事が楽しめる陣形となっている。

そこでまさかのブラジルを引き当ててしまった私。さあ頑張ろう。

 

 

ということで、今回見たのはラウンド16のブラジルvs韓国。

 

配置と噛み合わせ

 

韓国は攻守共に4-4-2が基本的なスタイル。

縦横圧縮も頑張る、引いても守れる。

ボールを持ったら動かしながら前進を試みるし、陣地回復やカウンターには世界のソンフンミンという割りと何でも出来るんじゃ無いかセット。

対してブラジルは442気味で守りながら、ボールを持ったら325へと変形していく。

この325に対して、韓国は良い噛み合わせが見いだせない。

 

2トップはバックラインに対してアプローチをかけるのか、2の中盤を消すのか定まらず。

4-4-1-1気味に縦に並んで消そうとすれば、中盤の選手は横移動で逃げて2トップの横から前進を図る。

そもそもとして、全員がプレス耐性の高いプレイヤーであることも相まって、基本的にはブラジルが保持しながらじっくり攻略、という展開に。

韓国もボールを持てればジリジリと前進は出来るが打開は出来ない、そんな雰囲気で試合は進む。

ちなみに先制点はあっさりと入った。

右サイドからカットインを匂わせながらミリトンが中への持ち出しから大外へ抜け出し。

マイナス気味のクロスは逆サイドからドフリーでゆったり侵入してきたビニシウスの足下へ。

このレベルの選手にペナ内で時間とスペースを与えてしまっては、外してくれるはずも無く。さくっとブラジルが先制する。

4-4守備が故に、大外から逆大外に対して誰がケアするのかはっきりしなかった部分が目についた失点だ。

そして落ち着かぬままブラジルが攻勢、PK献上から2失点目。

右に寄って立つという駆け引きを試みたGKスンギュだが、全てを見通したようなネイマールのPKにはなすすべがなかった。

 

 

前進されることを拒否しないブラジル

 

韓国はボールを持つと、2CBが開いてポゼッションを試みる。

ブラジルの前線守備がそこまで強度が高くないこともあり、保持しながらの前進自体は悪くない成功率だった。

しかしここで生きてくるのが、パケタとカゼミロの2ボランチ。

ブラジルの配置からして、2トップの脇を起点として韓国は前進してくるのだが、その前進を拒否するようなプレッシングはほぼ見られず。

よってサイドバックが韓国の攻撃起点として機能してくるのだが、ペナルティーエリアに侵入する素振りを見せるあたりで確実にボランチが守備のサポートに加わってくる。

ある程度は前進されても良いよ、でもシュートを匂わせるような場面からはしっかり防ごうという雰囲気。

あるいは韓国がブロックを崩そうとバイタル付近を横断するドリブルにチャレンジした瞬間にこの2ボランチは確実に止めてくる。

よって、ボールを持ててはいるがクロスもシュートもなかなか辿り着けない、という状態に韓国は陥ってしまう。

 

そして前進を拒否しないことで副産物が生まれる。

それが、ロングカウンターの威力だ。

 

ロングカウンターの鋭さ

 

保持すれば保持するで押し込める。

相手が保持しながら前進してきたらロングカウンターで刺しに行く。そんな柔軟性を見せるブラジルは圧倒的だった。

走ればチャンスになる、という場面で絶対にサボらないあたりに感覚の鋭さが見える。

そもそものスプリント能力が高いことに加え、ブラジルの保持によって消耗が進んでいく韓国にとってこのロングカウンターは非常に厄介だ。

とはいえ、早い段階で2失点してしまっている以上人数をかけて攻撃に出なければいけない。

 

しっかり守れば止められる、だから進ませちゃっても良いというブラジルの構え方は非常に合理的とも言える。

 

そんなカウンターパンチも出しながらゲームをコントロールするブラジルは、3人目の動きで完璧に崩しきって3点目を奪取。

この時点で半ばゲームは決まってしまったような物かもしれない。

 

 

たまーに奪う姿勢を見せるブラジル

 

とはいえ、ブラジルが面白かったのはたまーにいきなりボールを奪う姿勢を見せるところ。

多くはサイドで同数が作れる布陣になった瞬間、ボランチのスライドをスイッチとして開始しているように見えた。

ブラジルの守備としては、なるべくサイドバックが引っ張り出されないよう出来る範囲でサイドハーフを引かせることが多い。

その中でサイドハーフとボランチがタイミングを合わせて圧力を強める、というシーンが数度見られた。

正直頻度としてはそこまで多くないため、検証のしようがないのが難しいところではある。このボール奪取がベスト8以降も見られるかはちょっと注目したい。

 

有機物的サッカー

 

本来筆者は、機能美溢れるサッカーを見るのが好きなタイプだ。

それは攻守問わず、ソリッドに戦えるチームが好きという類いの物。

 

そんな筆者からすると、ブラジルは対極っぽい存在に見えて仕方が無かった。

上から見てて明確な決まり事がイマイチ見つからない。けれども個々の選手が選択している行動は確実に効果がある。

 

頑張って語彙をひねり出すなら、「有機物的サッカー」かな、と思った。

理屈や机上のシミュレーションでは図りきれない勝負所を抑えるような戦い方。

それが出来るのは、圧倒的な個人個人の能力の高さと観察力に支えられてのことだ。

 

実際、韓国は攻撃時にサイドでアイソレーション気味に1vs1を仕掛けられそうな場面がいくつかあった。

それでもほぼ全て、対人守備においてブラジル側が勝利して止めている。

韓国としてはソンにその仕事をさせたかっただろうが、中央で使う以上簡単ではない。

カウンター時にサイドに逃げながら陣地回復する能力の高さは見せたが、ブラジル側も対ソンは2人で対応というルールっぽいものが見られた。いくらソンといえど、このレベルのDF二人相手にぶっちぎるのは無謀である。

 

あるいは韓国が前進してから崩しにかかるタイミング、ここをブラジルは決して見逃さない。

行くか、という場面では必ず人数を手厚く、スライドをサボらずに対応してくるし、通されちゃマズい縦パスはしっかりコースを消してくる。

 

統率の元に部品が駆動するソリッドなチームとは対極、大まかな指針の下に随時判断が下される。

マドリーっぽいというか横綱相撲というか。

 

もしかしたら森保さんが目指したかったのはこの領域だったのかな、なんて思った。

クロアチア戦はそういった対応力において大きく負けていたように見えたのもあいまって、ちょっと切ない。

 

同格との試合を見ないと分からない事だらけ

 

韓国は決して悪いチームではないし、チャレンジングだったと思う。

実際、筆者は結構推していた。

 

 

だがブラジルから見れば局面局面で絶対勝てるという状況に結果としてなってしまった。

ということで、これから先、より強敵と当たったときにブラジルがどんな振る舞いを見せるのか、そこにヒントが見えると信じて観察していきたい。

といっても、案外このまま戦いきってしまう気もする。

そしてこういった局面と要所で勝負できるサッカーは、得てしてバランスのいい優れたチームに対して勝つんだよな。

 

とはいえ後半キックオフ直後とか、前半途中のスーパーミドルとか、韓国もチャンスが無かったわけではない。

 

さて、次の対戦相手はクロアチア。

日本戦で見せたように、彼らもまたスタイルを選ばない試合巧者である。

個人の能力から言えば上位互換とも言えるブラジルに対し、クロアチアがどう立ち向かうのか。それをブラジルはどう受けるのか。注目したいところだ。




 

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@山田有宇太

 

 

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