駆け引きを楽しむには技術とメンタルが大事という話

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サッカーを18年やった筆者だが、最近になって新たな後悔が生まれてきた。辛い。

どんな後悔かと言えば、「僕はサッカーの楽しさを半分ぐらいしか知らなかった」というもの。これはサッカーよりもむしろゲームを本気でプレイするようになって、それをサッカーに置き換えたときに気付いたものである。

そこに至る経緯としての私のサッカー観、そして選手を辞めて観戦勢になってからの受け取り方、ゲームという対人競技において学んだことを整理したときに、これは書き残した方が良いんじゃないか?と思ったので記事にしていこうと思う。

こんな不器用なプレイヤーが他に居るのかは分からないが、もしたった一人でも良いから

「サッカーで駆け引きを楽しめるようになりました!」

という人が現れたら良いなと祈っています。あと私の後悔を成仏させるために。

結論:サッカーは駆け引きが楽しいが私は楽しめなかった

まずざっくりとした結論を述べればこれ。私はサッカーという競技において、駆け引きを楽しみながらプレーすることが出来なかった。そしてそれによる弊害が数多く存在していたことを引退してから気付いてしまった。なんとも悲しい事態である。

  • サッカーは正解を見付けて判断する競技だと思っていた
  • ボールを持つことが嫌で仕方なかった
  • 駆け引きを楽しむ精神的余裕がなかった
  • だから守備が好きだったのではないか
  • 駆け引きの楽しさを、ゲームを通じて知った

という辺りが本記事で書きたいことになる。

私のサッカー観

この話をするにあたって、私の中にあったサッカー人生の中身を軽く紐解いておきたい。遠回りに思われるかもしれないが、結構根深い問題だったのではないか、と後から思うようになったのだ。

サッカーは正解を選択するスポーツだと思っていた

これは半分正解で半分間違いだなと今になって思うのだが、当時は正解を見付けてそのプレーを選択することがサッカーの全てなのだと思っていた。

私は小2から中2までGKだった。フィールドプレイヤーとしての練習はほぼ無く、ひたすらシュートを止めていた。あとDF陣へのコーチング。この頃にコーチングを身に付けたことで高校では役に立ったのだが、この当時はひたすら正解の対処をし、シュートを止めることが私の中でのサッカーだった。

中学に入ってGKをやめてからは、ひたすら走って守備を頑張って、攻撃は見えた景色の中から正解っぽい選択肢をひたすら選ぶ、というサッカー観。

これはちゃんと理論立ててポゼッションサッカーを学んだはずの社会人時代にも同じ事を考えていた。ひたすら視野と情報を確保して、そこから正解を選ぶスピードと精度を上げることこそが上達だと信じ続けていた。この考え方は後によろしくなかったと気付くことになる。

技術と自信が足りない選手

そしてこれがもう一つ、私のサッカー人生において最後まで影響を与える事実になるのだが、技術と自信があまりにも足りなかった。

正確に言うと、DFからプレッシャーを受けた状態で技術が発揮できない上に、そもそもの技術も足りないという悲しい状態。よくこの状態で地域リーグまで続けさせてもらえたなと今では感謝している。

具体的な技術で言えば

  • ファーストタッチ
  • 奪われないドリブル、とっさの足技

この二つが足りなかった。で、この二つがマジで駆け引きをする上で重要なんだな、と思っている。

技術と習慣がないと駆け引きできない、という体験談

ここからは私の、より具体的な体験談というか味わった辛さについて、なるべく知見としてかつ資料として残るよう、分かりやすく書き残していきたい。

そもそもファーストタッチが良くない

ひたすら自主練をし続けたサッカー人生だった私だが(参考記事→あなたは「正しい努力」が出来ていますか?~がむしゃらは善か悪か~)、最後までファーストタッチが良くならなかった。

風間八宏氏の指導はよく「トメルケール」と揶揄されるが、そもそも止められないと話にならないというのはその通りだと思う。

これに関してはただひたすら対面パスをしていた+なぜかロングパスの練習ばっかりしていたため、

  • 浮き球のトラップだけちゃんと出来る
  • 正面のトラップはギリギリ出来るがそもそもそんなシーン滅多にない
  • 方向を変えるトラップが全然出来ない

という状態に。そりゃこんな状態じゃ駆け引きもなにもあったもんじゃない、という状態。

なぜ駆け引きが出来ないかというと、自信が無いから移動中のボールから目を切って首を振ることができない。それに加えて筆者は「首を振る」という行為だけを練習してしまっていたので、せっかく首を振る動作が出来ていても観ることができていない、という最悪の事態に陥っていた。

味方の位置や相手の位置、体勢を把握できなければ駆け引きの土俵に立つことも出来ない、そりゃそうだ。

足下の技術がないから相手を見れない、引きつけられない

フィールドプレイヤーになるのが遅かった上に、必要な努力を見誤った私は足下の技術に欠ける選手だった。

そうするとどうなるか、ボールを持ったときに「奪われたくない」という小パニック状態に陥る。周りも見えないし、そもそも正しい判断だって出来ない。駆け引きなんてもってのほかだ。

結果、次の項目に繋がっていく。

プレッシャーをかけられると途端に技術が落ちる

最も悲しかったのがこれ。守備に寄せられると途端にミスが増える。

ノンプレッシャーのパスコンならばミスらないようなボールでも、DFに寄せられた瞬間にミスしてしまう。つまりプレッシャーを受けるのが極端に苦手だった。

ただでさえトラップが下手なのに、更に慌ててプレーするもんだからそりゃミスしまくる選手になってしまう。高校時代には「ピンチファクトリー」なるあだ名をつけてきた同級生がいた。そのせいで同期のサッカー部は大体嫌いだ。

これは後述するが、駆け引きする習慣がなく「正解を見付けなきゃ!奪われないようにしなきゃ!」というメンタルの弱さと考え方が大きく影響していたなと思う。

味方だけを観てプレーしてしまっていた

とまあここまで散々なプレイヤーであることが分かる書き方をしてきたが、それでも頑張って味方を見付けてパスを繋ごうと藻掻いていた。だがこれも今考えると非常に良くない。

皆様も経験無いだろうか。味方にパス!と思ってボールを蹴った直後に、居る事に気がつかなかったDFにあっさりボールをカットされてしまうという悲劇。

これはDFの位置を見ずに、味方だけを探してしまったから起こっていたんだなと今なら思う。で、その根源は駆け引きをしていないから相手を観ていない、つまり駆け引きの習慣がないというところに通じるのではないかと。

攻撃が全然楽しくなかった

こんな感じでサッカーをやってるとどうなるか。ボールを持つのが楽しくなくなる。相当珍しいと思うのだが、攻撃より守備の方が圧倒的に好きだった。高校時代にボールを持ち運ぼうとして

「お前にそんなの求めてねえんだよ!守備に備えろ!」

と怒られたのが結構焼き付いていたのもある、という言い訳は出来るのだが。だから私はサッカーの楽しさを半分しか知らなかったのではないかと最近になって思うのだ。

駆け引きの楽しさをゲームで知る

私は引退してから、対人FPS(銃で撃ち合うゲーム)にどハマりした。割と真剣に上達を目指し、1つのゲームを1800時間以上やり続けている。

その中で、サッカーの過程と全く同じ沼に落ち、そこから脱却できた。

簡単に言えば、自分のやりたいこと、やろうとしてることだけをプレイして相手を観てなかった。だがそこから上達するにつれ、相手の動きを見ながらセオリー(正解)+駆け引きをしてプレイするようになり、ゲームの楽しさが倍増した。

相手の動きを見ながら意図や意識を探り、未来を予想しながらそれに対して効果的なプレーを用意したり。あるいは自分の通したい行動のために、あえてそれを隠すような布石を打ったりバレないように意識したり。

もしこれがサッカーで出来ていたらどんなに楽しかっただろうと妄想する日々である。

最優先で身に付けるべき技術

ではどんな技術があればもっと私はサッカーを楽しめたか、ここでは2つに絞って挙げたい。

①奪われないドリブル

以前、ドリブルに関する記事を書いた。

足下の技術を磨く一番の利点は「ボール保持時のストレスを無くす」ということだ

詳しくはこの記事に書いたが、簡単に言えば

  • 足下の技術を身に付ければ、相手を観る余裕が出来る
  • ボールを持ったときに自信を持てるため、プレスに慌てなくなる

ということ。これはもう駆け引きに必要な下地だし、逆に言えば駆け引きが習慣化されればより磨かれると今になって思う。これはヴィヴァイオやクラッキス、野洲や静岡学園というチームと対戦したときに痛感した。ボールを持つことに自信があるからプレスを受けてもストレスに感じてないのが伝わってくるのだ。

②ファーストタッチ

とにもかくにも、ボールを思い通りに止められなければ駆け引きは始まらないと思う。のと同時に、しっかりと情報収集をするためにもファーストタッチの技術は超大事だなと。

自分はしっかりボールを止められるんだ、という自信があれば余裕を持って情報収集や観察が出来る。特に試合で使う、方向を変えるトラップを徹底して練習してほしい。

必要なのは技術と同時に習慣、むしろ習慣の方が大事

ここまで書いてみて思ったこと。

もちろん技術がないとプレーが実現できないが、大事なのは駆け引きをする、相手を観る習慣なのではと思い始めてきた。

日頃の練習からとにかく相手を観ることを意識すれば、必然的にボールの移動中に情報収集するし、ボールを持っていても顔を上げようとするし、パスを受けるときもDFの体勢や意識を気にするだろう。

駆け引きをするために技術が必要という順番なので、チャレンジする習慣が身に付けば自ずと必要な技術が身に付くし練習すべき内容も見えてくるはずだ。技術は道具であり、勝つために使えるようにしなければならない。日々の練習からチャレンジすることで道具の使い方を知り、自主トレで道具を磨くというサイクルが出来れば一番理想的だろう。

駆け引きが上手ければ技術を凌駕できることもある

相手との駆け引きに勝てれば、技術的なミスがあったり精度が低くてもプレーを成功させることが出来る。

キーパーとの1vs1で駆け引きに勝てれば完璧なシュートコースじゃなくても決まるだろうし、パスの方向を欺ければパスは通りやすくなる。現役時代は技術が無いからプレーを失敗していた、と思っていたがこの記事を書いている中で確信した。駆け引きをしていないから技術的ミスだとしか思えなかったのだ。駆け引きはプレーを無理矢理成功に出来ることもあるんだろうなと。

駆け引きを習慣化する

じゃあどうすれば駆け引きが習慣にできるだろうということを考える。こういう記事を書くときは大体

「昔の私にコーチングするならどんな記事で残すか」

という気持ちで書くため、これを読んでくれた人の助けにもなるのでは無いかと思う。

①まず駆け引きを試みる

一番最初にしてたぶん一番大事なこと。まずは失敗してもボールを奪われてもいいから、とにかく駆け引きにチャレンジしてみる。やってみないとどんな能力が必要かも分からないまま成長出来ない。

上記したような「相手を観る」「焦らない」などはチャレンジしてみて初めて必要性がより実感できるだろうし、技術が足りないと一言で言ってもどんな技術を身に付けないといけないのかは体感しないと身に染みないはずだ。

そもそも「課題にチャレンジする」という行為をサボったことが私の一番の後悔なので、まずはチャレンジするというのが何よりも大事だと痛感している。

具体的に言えば、

  • 相手の狙いを考えながら視野を確保する。インターセプトを狙っているのか裏を警戒しているのかなど意図が分かれば意表を突きやすい
  • 相手の視野を観る。ボールとマークの同一視が崩れた瞬間を狙うとかは典型的例。
  • 自分の出したいパスコースをあえて空けさせる。そのために体の向きで騙したりするが、騙せてるかどうかを観ることが大事。ここで観ないとただの自分の都合だけで「騙せてるはず!」という動きになってしまうため駆け引きではなくなる。

などなどシチュエーションは沢山あるのだが、一つ一つのプレイに対して「相手が居る」というのを認識することが第一歩なのだと思う。自分都合でプレーせずに相手都合でプレーする、という言葉が一番しっくりくる。で、その楽しさが掴めればしめたものだ。

②失敗を恐れない、チャレンジしないことを恐れる

これは個人的な体感だが、ミスを怖がったり怒られるのを避けようとするとどんどん安全な選択肢に走るようになる。そうするとリスクを冒さなくなるため、駆け引きの必要がない選択肢ばかりになる。結果としてどんどん駆け引きの出来るプレイヤーから遠ざかってしまうと思う。

怖がるのは怒られることではなく、成長出来ない時間を過ごすことだ。駆け引きは挑まないと上手くならない。

③必要な技術を具体的に練習していく

そうやって駆け引きに挑んでいくと、どんどん必要な技術が見つかると思う。

  • ファーストタッチを直前で方向を変えられるようになりたい
  • なるべくボールを見すぎずにパスを出せれば直前で選択肢を変えられるのでは
  • ターンを予備動作少なくすればバレにくいのではないか
  • 助走なくシュートを打てたらキーパーのタイミングを外せるかも

などなど、自分に必要な技術が見えてくる。技術練習に関しては具体的であれば上達が早く、また出来ないことにチャレンジした方が良いと考えているため、どんどん出来ないことを出来るようにしていってほしい。

自主トレについてはこちらの記事を是非。

思考を止めるな、自主トレは「メニュー」ではなく「目的」にこだわれ。

技術トレーニングは「コンフォートゾーン」から飛び出せ。失敗前提の練習をせよ。

私の知らないサッカーの楽しさを知って欲しい

たぶん、人と駆け引きをしながらするサッカーは凄く楽しいんだと思う。私は高いレベルを目指したが故に、どんどん余裕をなくして焦りながらプレーするようになってしまった。

プレスをかけられるだけでプチパニックになり、とにかく見えた味方へパスを繋ぐ。

事前に頑張って首を振るが、首を振ることに一生懸命で何も見えてないから駆け引きもクソもない。

ひたすら自分の頭の中だけでサッカーをしていたから、正解に辿り着けない自分がダメだと言い聞かせるだけの日々だった。

今改めてサッカーをしたら、全然違う競技に感じるんだろうな、と思うことが多々ある。ちなみにだが、選手を辞めて6年近く経った今でもサッカーをプレーする夢を見るし、夢の中でもトラップミスして怒られていた。夢の中でぐらい楽しくサッカーさせてくれ・・・

そんな私だからこそ、この記事を読んでくれた人にはサッカーの楽しさを知って欲しいと思う。そのためにはチャレンジあるのみだ。

なにしろ駆け引きの楽しさを知らないのに18年間も没頭するぐらい楽しいのがサッカーだ、駆け引きを楽しめたらそりゃ楽しくて仕方ないだろうし、実際に駆け引きが上手だなと思う選手は明らかに私より楽しそうにサッカーをしていた。だから来世では楽しんでサッカーするためにも、駆け引きのイロハを書き残そうと思ったのだ。誰か役立ててほしい。




 

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