技術トレーニングは「コンフォートゾーン」から飛び出せ。失敗前提の練習をせよ。

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皆様は「コンフォートゾーン」という言葉を知っているだろうか。

 

筆者は自分で言うのもなんだが、自主トレの量だけは強豪校の中でも多いほうだったと思う。そんな筆者がなぜ成長できなかったか、それはこの言葉が大きくかかわっている。

今回はこの「コンフォートゾーン」という言葉を通して、自主トレ含む技術系のトレーニングにおいて大切なこと、筆者の失敗を伝えたい。

サッカーに限らずあらゆる分野で適応できるはずだ。だから他の種目のアスリート含め、あらゆる人にこの記事が届くことを祈っている。

 

コンフォートゾーンとは

 

まず、この言葉の意味から。

コンフォートゾーン(英語:Comfort zone)とは、「快適な空間」を意味する語である。
心理学などでは、ストレスや不安が無く、限りなく落ち着いた精神状態でいられる場所を指す。また、天文学の世界では、生命が存在する可能性があるハビタブルゾーンの別名である。建設業界でも快適性評価に関連して使用されることがある。

—-Wikipediaより引用—-

というものである。

「快適な空間」という言葉がどう技術トレーニング、自主トレに関わってくるのか、それを解説していきたい。

 

技術トレーニングには快感が伴う

 

これは完全に個人的体験から思うことだが、技術トレーニングには一種の快感が伴っている。

というか、やっている競技や分野が好きな人はたいてい快感を覚えているはずだ。

野球なら投げる打つが楽しい、サッカーならボールを蹴ることが楽しい、FPSなら的や相手に弾を当てるのが楽しい。

楽しくて練習をもっとする、そうするともっと上手くなる。そんな理想を技術トレーニングに対してみんな抱いているだろう。

 

ところがどっこい、この快感が技術トレーニングにおいては落とし穴になると筆者は現役生活を終えてから気付いた。

 

「快感」と「疲労による満足感」という罠

 

先にも書いたように、筆者はトレーニング量だけなら高校専門共に屈指だったと思う。

なぜ上達しなかったのか、それはこの二つによって身にならない練習を繰り返していたからだ。

 

楽しい技術トレは「コンフォートゾーン」に居がち

 

ここに来て、冒頭に紹介したコンフォートゾーンの話になる。

実体験でもあり、またよく見る光景でもあるのだが典型的なロングパスの練習。

遠くの選手に対してミスらずに綺麗に往復するボール。淡々とこなす選手。

これ、紛れもなく僕がやっていた技術トレーニングだ。

 

ここに大きな問題点が潜んでいる。

 

ミスが起きない練習は、思った通りにボールが飛ぶし気持ちいいものだ。

だが、ミスの起きない練習は上達に繋がらない。出来ることを反復するだけでは技術の意地にしかならないと筆者は今になって思う。

なぜこのような練習を繰り返すのか、それが心地良い空間「コンフォートゾーン」だからである。

 

疲労感と練習量は充実感になる

 

沢山の練習をこなすことは、それだけで気持ちいい。「努力中毒」と言っても良いだろう。また量をこなせば当然体には疲労が来る。その疲労すら、心地が良いものなのだ。これは筆者がずっと感じていた気持ちである。

「あー、俺頑張ってるなあ」という気分になるのだ。

この充実感、今だから分かるが間違いである。

練習の目的は快感を得ることではない、成果を出すこと、成長することだ。ここを充実感とコンフォートゾーンによって得られる快感のせいで見失ってしまったこと、それが筆者が現役時代に成長できなかった理由だと考えている。

 

スポーツに限った話ではない

 

これはきっとスポーツに限った話ではない。

例えば筆者の趣味であるゲームにしてもそうだ。弱い敵をずーっと倒すのは楽しいがそれでは強い敵には一生勝てない。簡単な技をたくさん繰り返しても難しい技が出来るようになるわけではない。勉強に関してもたぶんそうだろうし、仕事の多くもそうだと思う。

失敗せずに繰り返せることは快感であり、自己肯定感も高まる。だがそこから抜け出さなければ、先へは進めないのだ。

 

失敗するような練習をせよ

 

じゃあ進歩するためにはどんな取り組みをすれば良いのかという話になってくる。

ここで筆者の頭に浮かぶのは、専門学校で見た先輩の姿だ。

 

身近で見た良い練習と悪い練習の例

 

彼は自分よりも遙かに上手い選手だった。自分は二年生で上の方のチームに抜擢されたがなかなか通用せずベンチ外、彼はスタメン。そんな実力差だった。

ある日のシュート練習、DFを交わしてシュートというシンプルな練習でのこと。

私は交わしてしっかり体勢を整えて、少しでも良いシュートを撃とうと思っていた。だから枠外にすっ飛ぶことはほぼ無かった。

一方で上手い彼は、大きく枠外に外していた。それも何度も。

 

彼が取り組んでいたのは、一切減速せず一切体勢を整えないでシュートを打つという練習だった。そりゃ盛大に外すし上手くいかない。その代わり、どう考えても私より身になる練習をしている。同じメニューをこなしているのに、意識一つで大きく成果が変わってしまう。

このことに気づき、自分の間違いを素直に認めることが出来たのは引退してからだった。必死ではあったが自分を客観視できていなかったのだ。

 

 

出来ていないことを練習する

 

となればやることは明白だ。失敗するような技術に何度も挑戦する事である。

対面パス一つにしても、ちょっとでも早いパスを目指したり体の向きを変えてみたり。シュート練習ならば体勢を立て直さないとか、100%の力でひたすら蹴りながら精度を上げるとか。ロングパスだったらふんわりは蹴れるからライナーを練習しようとか。

出来ていないことをしっかり抽出し、それを出来るように練習することだ。

 

サッカーにおける例

 

サッカーでいうと、この視点で考えれば身になる練習が出来るという例がいくつかある。

 

①体勢を整えない、実戦のように余裕がない中での技術
②スピードを落とさずにプレーする技術
③力と精度のバランスを取らずに、フルパワーでの精度

 

①はとにかく急いでプレーするようなイメージ。

実戦では自分のタイミングで出来るプレーが限られている。一歩しか助走を取れずにロングキックを蹴らないといけないかもしれない。トラップが大きくなってもすぐにパスをださないといけないかもしれない。

そういった状況で技術を発揮するために、時間的猶予を無くした練習をするのだ。中村憲剛がよく口にしていた「止めてすぐパス」という練習もこれにあたる。

このメリットはトラップの精度のみならず、多少崩れてもパスを出す能力が身に付く点だと筆者は思う。このように、整えずにプレーする技術トレーニングは間違いなくミスが発生するはずだ。

 

②は先に挙げたシュート練習のようなものだ。トラップでも同様のことが言える。走りながらトラップする際、トップスピードでもしっかり止められる選手は多くない。

その動きながらのトラップに、体の向きを変えるという動作を付けるとなお実戦に近い。

ボールに寄りながら受け、ワンタッチで前を向くという一連の流れが分かりやすいだろうか。

 

③は少し分かりにくいかもしれない。

一般的に、精度の高いキックを蹴ろうとするとボールのスピードは落ちる。置きに行くキックというものだ。シュートやパスの練習の際、精度を気にする人は多いと思う、そこにボールスピードも是非考慮して欲しい。

早いキック、特にフルパワーとなれば精度はガクッと落ちる。そこでパワーを落とすのではなく、フルパワーのキックの中で精度を少しでも上げるのだ。

この意識で練習すると、とにかくミスが連発するだろう。プロですらフルパワーのミドルシュートは大きく枠外に外れることが多い。それでも、ミスを怖がらずにフルパワーで練習してみて欲しいと思う。

 

藻掻くことを楽しんで欲しい

 

上気した意識で技術トレーニングをすると、絶対失敗する。失敗しないのならば設定がうまく出来ていない。

沢山ミスをしながらああでもないこうでもないと試行錯誤するのは、今まで思考停止でトレーニングしていた人にとっては大変だと思う。頭が疲れる感覚もあるだろう。

その藻掻く行為を、成長する過程を楽しめるようになって欲しいと思う。

練習の行為そのものに快感を覚えることは危険だ。どうすれば成長できるか、そこで藻掻き苦しみ前進することに価値がある。

これを楽しむためには思考を止めないメンタリティ、自分を客観視する冷静さが必要だ。

どうか思考停止せず、沢山藻掻いて欲しい。そうやって手に入れた技術は間違いなく実戦で我が身を助けてくれる。

 

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